「洗顔は1日1回がいい」「いや2回」 「W洗顔は不要」「いや必要」 「泡で洗う」「泡は関係ない」
洗顔ほど、言うことが食い違う分野もありません。理由のひとつを、先に書いておきます。
洗浄剤についての文献は、洗浄剤を作る会社の研究者が書いていることが、とても多いのです。
この記事を書くにあたって集めた文献を見ても、「やさしいポリマー洗浄技術の進歩」「シンデット(合成洗浄剤)の総説」「セラミド配合スキンケア」——いずれも著者の所属に、製品を開発・製造する企業が入っていました。
内容が誤りだという意味ではありません。 ただ、「やさしい洗浄剤が良い」という結論が、やさしい洗浄剤を作る会社から出ているとき、読み手はそのぶんを差し引いて考える必要があります。
そのうえで——はっきりしていることだけを拾い出すと、意外に少ないのです。 今日はそれを並べます。
回数 ——日本には、公式の答えがあります
洗顔について、日本のガイドラインが明確に答えを出している項目が、ひとつだけあります。
日本皮膚科学会の『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023』の CQ43「痤瘡に洗顔は有効か?」 です。
推奨度 C1(選択肢の一つとして推奨する) 痤瘡患者に1日2回の洗顔を推奨する。
(日本皮膚科学会 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023)
1日2回。 増やすでも減らすでもなく、そこが推奨されています。
朝は洗わないほうがいい、という主張について。 夜のあいだに皮脂は分泌され、寝具との接触もあります。皮脂が多い方、ニキビがある方が朝の洗顔を省くのは、ガイドラインの推奨とは逆方向です。 一方、乾燥が主訴で皮脂が少ない方が、朝はぬるま湯だけにするという選択は、現場ではしばしば取られます。自分がどちらかで変わります。
何で洗うか ——ここがいちばん実務的です
洗浄剤の主役は界面活性剤です。油を乳化し、表面張力を下げ、汚れを落とす。同時に、肌の脂質にも作用します。
2025年に報告された総説(著者は工学系の大学で、企業所属はありません)が、界面活性剤と皮膚の関係を整理しています(PMID: 40795538)。
要点は次のとおりです。
- 界面活性剤への曝露は、脂質の破壊、タンパク質の変性、炎症反応と結びつくという証拠が増えている
- 界面活性剤の構造——親水基の電荷、ミセルのサイズ、エトキシ化の程度——が、皮膚との適合性を決定的に左右する
- アニオン界面活性剤(SLS、LASなど)は、強い刺激性を示す
- 両性および非イオン性のタイプは、皮膚への忍容性がより良い
- ポリマー系・生物由来の界面活性剤は、バリア障害の軽減に有望
- 年齢や状態によって反応が違い、新生児の肌とアトピーの肌では脆弱性が高い
「洗浄力が強いか弱いか」ではなく、「どの型の界面活性剤か」を見る。
同じ「よく落ちる」でも、アニオンで落とすのと、非イオン性で落とすのとでは、肌への影響が違います。成分表示の上位に何が来ているかを見てください。
そして——アトピーの傾向がある方、肌が敏感な方は、この差がそのまま効いてきます。 「皆が使っているから大丈夫」は成り立ちません。
どこまで落とすか ——「W洗顔不要」について
メイクや日焼け止めは、水では落ちません。 落とすためには、油か界面活性剤が要ります。ここは動かせません。
そのうえで、「W洗顔不要」の是非です。
判断の基準はひとつだけです。「落ちているかどうか」。
- クレンジングだけでさっぱりしている → 追加は要りません
- ぬるつきが残る → 残っているか、洗浄成分が残っています。どちらも良くありません
- 突っ張る、ヒリつく → 落としすぎです
回数の議論に意味はありません。 1回で落ちるなら1回。落ちないなら、もう1回増やすより、最初の製品を変えるほうが筋が通ります。
落とせていないメイクや日焼け止めが残ることも、問題です。 「優しさ」だけを追い求めて落ちきらないと、残った油分や粒子が毛穴に留まります。優しさと、落ちることは、両立させる必要があります。
どう洗うか ——ここは既に書きました
洗い方については、この2つに集約されます。
- 摩擦を減らす — 手順は摩擦レス洗顔の6ステップにまとめました
- 熱いお湯を使わない — 理由はすすぎの水温の記事へ
そして——すすぎ残しは、洗浄剤を肌に置いたままにすることです。 上に書いたとおり、界面活性剤は肌の脂質にも作用します。丁寧に流してください。
洗顔で「治す」ことはできません
最後に、いちばんお伝えしたいことを。
洗顔は、治療ではありません。 ニキビも、毛穴も、乾燥も、洗顔を変えるだけで治るものではありません。
同じガイドラインが、痤瘡の寛解維持について推奨度A(強く推奨する)を与えているのは、アダパレン0.1%ゲル、過酸化ベンゾイル2.5%ゲル、その配合ゲルという外用薬です。洗顔(CQ43)はC1、痤瘡用基礎化粧品(CQ44)もC1。推奨の重みが、明確に違います。
洗顔は「悪くしないための土台」であって、「良くするための手段」ではない。 ここを取り違えると、洗顔料を延々と買い替えることになります。
角栓とオイルクレンジングについてはこちらの記事に、毛穴そのものについては毛穴の3つの原因に書きました。
まとめ
- 洗浄剤の文献は、洗浄剤を作る会社が書いていることが多い。読むときに差し引く必要があります
- 回数は、日本のガイドラインが答えを出しています。CQ43=1日2回、推奨度C1
- 皮脂が多い方・ニキビがある方が朝の洗顔を省くのは、ガイドラインの推奨とは逆方向です
- 見るべきは「洗浄力の強弱」ではなく「界面活性剤の型」。 アニオン(SLS、LASなど)は刺激性が強く、両性・非イオン性は忍容性がより良い
- アトピーの傾向がある方、敏感な方では、この差がそのまま効きます
- 「W洗顔不要」の判断基準は回数ではなく「落ちているか」。ぬるつくなら足すのではなく、製品を変える
- 洗顔は治療ではありません。 ガイドラインで推奨度Aがついているのは外用薬のほうです
洗顔は、毎日のことです。だからこそ、変えれば何かが変わる気がします。
けれど——洗顔でできるのは、悪くしないことまで。 そこを分かって選べば、洗顔料の売り場で迷う時間は、かなり短くなります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。肌に合わない場合は使用を中止し、症状が続く場合は皮膚科にご相談ください。
参考文献- Surfactant-containing detergents: Impacts on dermal health. Colloids Surf B Biointerfaces. 2025. PMID: 40795538
- 日本皮膚科学会 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(CQ43・CQ44・CQ27〜29)
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

