「紫外線対策が大事なのは分かっています」
そう言われる方に、私はよくこう返したくなります。では、実際にどれだけ違うのでしょうか。
日焼け止めが皮膚がんを減らすことは、以前から示されてきました。けれど多くの方が気にされているのは、そこではなく「シワやたるみを防げるのか」という点です。
この問いに、人で、無作為に割り付けて、4年半かけて答えを出した試験があります。私が知る限り、この種のものはほぼこれ一つです。
903人を、4年半
オーストラリアのナンバー(南緯26度)という町で行われた、地域を単位とした無作為化比較試験です。55歳未満の成人903名が参加しました。
参加者は、次の4群に無作為に割り付けられました。
| | 日焼け止め | サプリメント | |---|---|---| | ① | 毎日塗る | β-カロテン30mg | | ② | 毎日塗る | プラセボ | | ③ | 塗りたいときに塗る | β-カロテン30mg | | ④ | 塗りたいときに塗る | プラセボ |
そして1992年から1996年までの間、肌の表面の微細な凹凸(microtopography)の変化を、割り付けを知らされていない評価者が判定しました。
結果です。
毎日塗った群では、4.5年経っても皮膚の老化の増加が検出されなかった。
塗りたいときだけ塗った群と比べると、皮膚の老化は24%少なかった(相対オッズ 0.76、95%信頼区間 0.59–0.98)。
β-カロテンの補充には、皮膚の老化に対する全体的な効果は認められなかった。
(PMID: 23732711)
この結果の、どこが重要か
3つあります。
① 「防いだ」ではなく「進まなかった」24%少ない、という数字より重いのは、毎日塗った群で老化の増加が検出できなかったという部分だと考えています。4年半、肌が動かなかった。日焼け止めは減点を防ぐ道具であって、加点する道具ではありません。この試験は、その「防ぐ」がちゃんと成立することを示しました。
② 「塗りたいときに塗る」では足りなかった比較対象は「塗らない群」ではありません。「塗りたいときには塗る群」です。つまり、外出時や晴れた日には塗っていた人たちと比べて、なお差がついた。
日常の紫外線は、意識される場面より広く当たっています。差を作るのは強度ではなく、日数です。
③ 飲むタイプには効果が出なかった同じ試験でβ-カロテンを飲んだ群には、皮膚の老化に対する全体的な効果が見られませんでした。「飲む紫外線対策」を検討される方は、この結果を知ったうえで判断していただきたいと思います。塗るものの代わりにはなりません。
この試験の限界も、書いておきます
- 実施は1992〜1996年。当時の日焼け止めは、現在ほどUVAへの防御が強くありませんでした。今の製品ならより良い結果が出る可能性はありますが、それは推測です
- 論文自身が、一部のアウトカムデータが欠損しており、中等度の治療効果を検出する検出力は限定的だったと述べています
- 南緯26度のオーストラリア。日本とは紫外線量も生活も違います
それでも、これが最良のヒトのデータです。 「日焼け止めがシワを防ぐ」という主張の根拠は、実質ここに集約されています。
では、どう使うか
ここからは、測定された事実というより、上の結果から筋の通る使い方の話です。
- 毎日塗る。 この試験が差を作った要因は、そこにあります。特別な日ではなく、普通の日に塗るかどうかです
- 量が足りないと、表示のSPFは出ません。 顔だけでも、指の第一関節2つぶんが目安としてよく使われます
- 塗り直しは、汗をかいたときと、外にいる時間が長いときに。 室内で過ごした日に神経質になる必要はありません
- UVAへの防御(PA表示)も見てください。 シワ・たるみに効いてくるのは、こちらの波長です
- 飲むタイプは、塗るものの代わりになりません。 上の試験でβ-カロテンには効果が出ませんでした
「毎日、適量を、UVAも防ぐもので」。言ってしまえばそれだけです。 派手さはありませんが、4年半で差がついたのはこの方法でした。
まとめ
- 日焼け止めが光老化を防ぐかどうかを、人で無作為に割り付けて4.5年かけて調べた試験がある(903名、オーストラリア)
- 毎日塗った群では、4.5年後も皮膚の老化の増加が検出されなかった
- 「塗りたいときに塗る」群と比べて、皮膚の老化は24%少なかった
- 比較の相手は「塗らない人」ではなく「時々塗る人」。差を作ったのは強度ではなく日数です
- β-カロテンの内服には、皮膚の老化に対する効果が認められなかった
- 限界: 1990年代の製品、一部データ欠損、オーストラリアでの実施
美容医療には、もっと派手で、もっと効きそうな選択肢がたくさんあります。けれど「4年半、肌が動かなかった」という結果を持っているものは、そう多くありません。
いちばん地味なものが、いちばん確かだった。この分野では、わりとよくあることです。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。日焼け止めが合わない場合や、症状がある場合は皮膚科にご相談ください。
参考文献- Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013. PMID: 23732711
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

