「飲む美容、何がいいですか」
このご質問には、成分ごとに答えが違うとしか言えません。そして——「効く/効かない」の二択でもありません。
たとえば、こういうことが起きています。
アスタキサンチンは、水分量と弾力を有意に改善した。けれどシワの深さは、改善しなかった。
同じ成分で、測る項目によって結果が分かれる。 だから「効きますか」には、「何に対して、ですか」と聞き返す必要があります。
今日は、主な成分をひとつずつ見ていきます。
まず、この分野全体の問題
個別の話に入る前に、土台を確認します。
2020年に米国皮膚科学会誌に掲載された、皮膚科領域のサプリメントについてのレビューがあります。亜鉛、ビオチン、ビタミンD、ニコチンアミド、Polypodium を扱ったものです(PMID: 32360756)。
著者らが指摘した問題は、次のとおりでした。
- これらのサプリメントの安全性と有効性のエビデンスは、限られている
- 大規模なランダム化比較試験は、ごくわずかしか存在しない(特にビオチンとPolypodium)
- 用量が標準化されておらず、評価する指標も標準化されていないため、研究どうしの比較が難しい
- 大半の研究で有害事象が報告されておらず、安全性の分析が制限される
最後の点を、もう一度読んでいただきたいのです。「副作用が報告されていない」は、「副作用がない」ではありません。 「調べていない、あるいは報告していない」という意味であることが、この分野では珍しくありません。
成分ごとに見ていきます
ニコチンアミド(ビタミンB3)— この中では最も有望
同じレビューが、最も有望なエビデンスがあるのは、ニコチンアミドによる非黒色腫皮膚がんの予防であるとしています(PMID: 32360756)。
美容目的の成分としてではなく、予防の文脈で評価されている——ここが他と違う点です。
ただし、日本で一般的に「美白」として語られるナイアシンアミドは、外用の話です。塗る場合の中身はこちらの記事に書きました。
アスタキサンチン — 項目によって結果が分かれる
11件の研究をまとめた系統的レビュー・メタ解析があります。うち9件が経口摂取のランダム化比較試験です(PMID: 34578794)。
| 評価項目 | 結果 | |---|---| | 水分量 | 有意に回復(SMD 0.53) | | 弾力 | 有意に改善(SMD 0.77) | | シワの深さ | 有意な減少なし |
「肌のハリが出る」は言えても、「シワが消える」は、この解析からは言えません。
なお、研究間のばらつきは大きく(弾力ではI²=75%)、結果の一貫性は高くありません。
グルタチオン(白玉系)— 経口と点滴で、評価が真逆です
2024年に報告された系統的レビューが、美白剤としてのグルタチオンを検討しています(PMID: 39444151)。
- 経口 — 5件のランダム化比較試験と1件の単群試験で、メラニン指数がプラセボより有意に減少
- 外用 — 0.5%は0.1%やプラセボより有意に有効
- 併用 — 外用2%+経口が、単独より優れていた
- 静脈内(点滴)— 有効性の欠如と副作用のため、禁忌(contraindicated)とされています
飲むのと点滴とで、評価がここまで分かれる成分は珍しいと思います。
そして著者らは、外用も経口も「中等度に有効」としつつ、持続しない(unsustainable)とも述べています。やめれば戻る、ということです。
点滴については、白玉点滴・高濃度ビタミンC点滴の記事もあわせてお読みください。
コラーゲン — 資金源で結果が反転しました
23件のRCT・1,474名のメタ解析で、全体では改善が出たものの、製薬企業の資金提供を受けていない研究に限ると、効果が消えました。 質の高い研究に限っても同様でした。
詳しくはコラーゲンサプリの記事に書きました。この一件は、サプリメントの記事を読むときの物差しになります。
β-カロテン — 効果が出ませんでした
903名を4年半追跡した無作為化試験で、日焼け止めの効果とあわせてβ-カロテンの内服も検証されています。結果は——皮膚老化に対する全体的な効果は認められませんでした(PMID: 23732711)。
「飲む紫外線対策」を検討される方には、この結果を知ったうえで判断していただきたいと思います。詳しくは日焼け止めの記事へ。
ビオチン・亜鉛 — 推奨するには不十分
上のレビューの結論です。
現時点のエビデンスは、皮膚科の領域でビオチンや亜鉛のサプリメントの使用を推奨するには不十分である。
(PMID: 32360756)
「不足していれば補う意味がある」ことと、「不足していない人が飲んで効く」ことは、別の話です。 前者は栄養の話、後者は美容の話です。
ビタミンD・Polypodium — 部分的な証拠
ビタミンDについては、一部の人でメラノーマのリスク低下や進行に関する証拠があり、Polypodiumには光保護の役割があるとされています。ただしどちらも、適切な用量を決めるには追加の質の高い研究が必要とされています(PMID: 32360756)。
この分野の読み方
ここまでを並べると、共通の読み方が見えてきます。
(1)「効いた」の中身を見るアスタキサンチンは水分と弾力に効き、シワには効きませんでした。「肌に良い」の一言では、この差が消えます。
(2)誰がお金を出したかを見るコラーゲンの例が示すとおり、資金源で結果が変わることが実際にあります。
(3)「副作用の報告がない」を安全と読み替えない調べていないだけ、という場合があります。
(4)投与経路で評価が変わることがあるグルタチオンは、経口では有効性が示され、点滴では禁忌とされています。
(5)やめれば戻る多くは持続しません。 一生続ける前提かどうかを、最初に考えてください。
で、飲むならどうするか
- まず、塗るほうと生活のほうを固める。 日焼け止めを毎日塗ることのほうが、どのサプリより確かなデータを持っています
- 不足しているものを補うのは、別の話です。 食事が偏っている、検査で低い、という場合は栄養の問題として対処してください
- 「これを飲めば」で始めない。 何に対して、どのくらいの期間で、何をもって効いたと判断するかを、先に決めてください
- 持病がある方、服薬中の方、妊娠・授乳中の方は、必ず医師に確認を。 サプリメントにも相互作用があります
まとめ
- この分野は、大規模RCTが少なく、用量も評価指標も標準化されていません
- 「有害事象の報告がない」は「安全」ではありません。 調べていない場合があります
- ニコチンアミド — この中では最も有望(非黒色腫皮膚がんの予防)
- アスタキサンチン — 水分と弾力は有意に改善、シワの深さは改善せず
- グルタチオン — 経口はメラニン指数を有意に低下。点滴は、有効性の欠如と副作用のため禁忌
- コラーゲン — 資金源で結果が反転
- β-カロテン — 4年半の無作為化試験で、皮膚老化への効果なし
- ビオチン・亜鉛 — 推奨するには不十分
- 多くはやめれば戻ります
「飲む美容」は、手軽で、続けやすく、期待も乗せやすい分野です。
だからこそ、一言でまとめられた説明は疑ってください。成分ごとに、そして測る項目ごとに、答えは違います。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。持病のある方、服薬中の方、妊娠中・授乳中の方は、サプリメントの併用について必ず医師にご確認ください。
参考文献- Dietary supplements in dermatology: A review of the evidence for zinc, biotin, vitamin D, nicotinamide, and Polypodium. J Am Acad Dermatol. 2020. PMID: 32360756
- Systematic Review and Meta-Analysis on the Effects of Astaxanthin on Human Skin Ageing. Nutrients. 2021. PMID: 34578794
- Glutathione as a skin-lightening agent and in melasma: a systematic review. Int J Dermatol. 2024. PMID: 39444151
- Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013. PMID: 23732711
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

