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Skincare2026-05-01

大気汚染は肌に何をしているのか|粒子はシミと、オゾンはシワと結びついていた

Dr. みやか

Dr. みやか

8 min read

「大気汚染も肌に良くないんですよね」

そのとおりです。ただ、「良くない」で止めてしまうと、何をすればいいのか分かりません。

実は、この領域には興味深いデータがあります。汚染物質の種類によって、結びつく症状が違うのです。

| 何に曝露したか | 何と関連していたか | |---|---| | 粒子(すす・交通由来) | 額と頬の色素斑 | | オゾン | 顔の粗いシワ(色素斑とは関連しなかった) |

今日は、この分かれ方をお話しします。そして——「だから抗酸化ケアを」と言い切れるかどうかについても、正直にお伝えします。


粒子は、シミと結びついていた

2010年に報告された研究は、70〜80歳のドイツ人女性400名を対象に、大気汚染への曝露と皮膚老化の関係を調べました。

皮膚老化は、検証済みのスコア(SCINEXA)を使って臨床的に評価されています。曝露のほうは、住所地での交通由来の粒子排出量と、微小粉じん中のすすの推定量、そして固定測定局で測った背景粒子濃度から求められました。

結果はこうでした(PMID: 20664556)。

  • 大気汚染への曝露は、外因性の皮膚老化のサインと有意に相関していた
  • 特に色素斑との相関が強く、シワとの相関はそれほど強くなかった
  • すすと交通由来粒子の増加は、額と頬の色素斑が20%多いことと関連していた
  • 交通量の多くない住宅地で測った背景の粒子濃度も⁠、顔の色素斑と正の相関を示した

最後の点が、地味ですが重要です。 幹線道路沿いに住んでいなくても、関連は見られました。「交通量の多い場所を避ければいい」という話ではない、ということです。

オゾンは、シワと結びついていた

もうひとつ、2019年に報告された研究があります。2つのドイツのコホート——806名の女性(66〜79歳)と、1,207名の男女(60〜84歳)が対象です。

こちらは対流圏オゾンへの5年間の曝露を調べました。住所地の周辺で、1日8時間平均のオゾン濃度が基準を超えた日数が、年に何日あったか。

結果はこうです(PMID: 30641257)。

  • オゾンの超過日数は、顔の粗いシワと正の関連を示した
  • 色素斑とは関連しなかった
  • この関連は、2つのコホートそれぞれでも、合わせた集団でも見られた
  • 慢性的な紫外線曝露(最も明白な交絡因子)とは独立しており、粒子状物質や二酸化窒素といった他の汚染物質とも独立していた

「紫外線を調整してもなお残った」——ここが、この研究のいちばん強いところです。日焼けの影響を差し引いても、オゾンとシワの関係は消えなかった。

この2つを並べると、こうなります

粒子は、シミと。 オゾンは、シワと。

きれいに分かれています。同じ「大気汚染」でも、肌に出る形が違う。

理屈としては、次のように考えられています。粒子は物理的に肌の上に乗り、炎症を起こす。炎症が続くと、色素が作られる方向に働く。 一方、オゾンは気体で、角層の脂質を直接酸化する。 皮膚の深いところには届きませんが、表面で起きた酸化のシグナルが下に伝わる、という筋道です。

ただし、ここは機序としての説明であって、上の2つの研究が証明したことではありません。 そこは分けてお読みください。

この結果の限界を、先に書いておきます

数字が具体的なので、そのまま受け取りたくなります。けれど、注意すべき点が3つあります。

(1)観察研究です

どちらも、汚染の多い場所に住んでいる人と少ない場所に住んでいる人を比べた研究です。割り付けたわけではありません。 つまり相関であって、因果ではありません。 汚染の多い地域に住むことと相関する別の要因(収入、職業、屋外にいる時間、喫煙)が影響している可能性は、統計的に調整しても完全には消せません。

(2)対象が限られています

いずれもドイツ在住の高齢者で、多くが白人女性です。日本人の肌、日本の大気環境にそのまま当てはまるかどうかは、別の問題です。

(3)「20%多い」は、対策の効果ではありません

これは曝露が多い群と少ない群を比べた差です。「対策すれば色素斑が20%減る」という意味ではありません。ここは、広告で最も入れ替わりやすい部分です。

では、抗酸化ケアはどうなのか

ここが、この記事でいちばん正直にお伝えしたい部分です。

大気汚染の話には、たいてい「だから抗酸化ケアを」という結論がついてきます。機序としては筋が通ります。粒子もオゾンも酸化ストレスを介して働くと考えられているので、抗酸化剤で防ぐという発想は自然です。

けれど、それを人で確かめた比較試験は、私が探した範囲ではごくわずかしか見つかりませんでした。

「効かない」という意味ではありません。 「効くと言い切れるだけのデータを、私は示せない」ということです。機序が正しそうであることと、実際に人で差が出ることは、別々に確かめる必要があります。

ですから、この記事では「抗酸化ケアで大気汚染から肌を守れます」とは書きません。

代わりに、根拠のはっきりしていることを

では、何ができるのか。上の2つの研究から、そのまま導けることを挙げます。

(1)紫外線対策は、独立して効きます

オゾンの研究は、紫外線を調整してもなおオゾンとシワの関連が残ることを示しました。これは裏を返せば、紫外線そのものの寄与も別にあるということです。そして紫外線については、毎日塗ることで4年半にわたり皮膚老化の増加が検出されなかった無作為化試験があります。大気汚染より、こちらのほうが根拠がはっきりしています。

(2)粒子は「乗っている」ので、落とせます

オゾンは気体ですが、粒子は物理的に肌の表面に付着します。 一日の終わりに落とすことには、機序として素直な意味があります。ただしゴシゴシ洗う必要はありません。 バリアを削ってしまえば、かえって炎症が起きやすくなります。

(3)色素斑の対策は、すでに分かっている道筋があります

大気汚染が色素斑と関連するとしても、できてしまった色素斑への対処法は、原因によらず共通です。遮光を土台に、必要なら外用や内服、機器を組み合わせる。トラネキサム酸の記事やピコレーザーの記事でお話ししたとおりです。

「大気汚染専用のケア」を探すより、色素斑とシワへの標準的な対策を固めるほうが、確実です。

まとめ

  • 粒子(すす・交通由来)は、額と頬の色素斑と関連していました(400名の観察研究)。曝露が多い群で20%多い
  • 背景の粒子濃度——交通量の多くない住宅地でも、色素斑と正の相関がありました
  • オゾンは、顔の粗いシワと関連していました(806名+1,207名の2コホート)。色素斑とは関連しませんでした
  • オゾンとシワの関連は、紫外線を調整してもなお残りました
  • どちらも観察研究=相関であって因果ではありません。 対象はドイツの高齢者です
  • 「20%多い」は曝露群の差であって、対策の効果ではありません
  • 抗酸化ケアが大気汚染から肌を守ることを人で確かめた比較試験は、ごくわずかしか見つかりませんでした。 効かないという意味ではなく、言い切れないということです
  • 確実なのは、紫外線対策・一日の終わりに落とすこと・色素斑への標準的な対策です

大気汚染は、自分では変えにくいものです。

そして——変えられることのほうに、確かなデータが揃っています。 遮光と、一日の終わりに落とすこと。こちらは、今日から手が届きます。

そして、「◯◯が肌に悪い」という話には、たいてい「だから◯◯ケアを」という商品がついてきます。 そのつながりが確かめられているかどうかは、別に見る必要があります。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。気になる色素斑がある場合は、自己判断せず皮膚科にご相談ください。

参考文献
  • Airborne particle exposure and extrinsic skin aging. J Invest Dermatol. 2010. PMID: 20664556
  • Tropospheric ozone and skin aging: Results from two German cohort studies. Environ Int. 2019. PMID: 30641257

※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。実際の判断は主治医とご相談ください。

Dr. Miyaka Signature

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

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