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Treatment2026-08-27

ニキビ跡には3つの型があります|型が違えば効く治療も違い、日本の指針も別々です

Dr. みやか

Dr. みやか

10 min read

「ニキビ跡を治したいんです」

このご相談で最初に必要なのは、治療の話ではなく「どの型か」です。

ニキビ跡は、大きく3つに分かれます。そして——日本には、この領域を扱ったガイドラインが2つあり、型ごとに別々の推奨を出しています。

| 型 | 見た目 | 触った感じ | |---|---|---| | ① 赤み・色素沈着 | 平ら。赤か茶色 | 段差がない | | ② 萎縮性瘢痕(凹み) | クレーター状 | 凹んでいる | | ③ 肥厚性瘢痕・ケロイド | 盛り上がっている | 硬い |

指で軽くなでて、段差があるかどうか。 これが、いちばん簡単な見分け方です。


赤み・色素沈着 ——これは「瘢痕」ではありません

炎症が治まったあとに残る、平らな赤みや茶色。 段差がなければ、これは組織が失われたわけではありません。

多くは時間とともに薄くなります。 赤みは数ヶ月、色素沈着は半年から年単位のことがあります。

やるべきこと
  • 遮光。 色素沈着は日光で濃くなり、長引きます(日焼け止めの記事へ)
  • 触らない、こすらない。 炎症後の色素沈着は、刺激を加えた場所に残ります
  • 新しい炎症を起こさない。 これがいちばん効きます

赤みが長く残る場合については、日本形成外科学会の『形成外科診療ガイドライン3 2021年版 創傷疾患』に項目があります。CQ35「醜状瘢痕に混在する毛細血管拡張にレーザーを含めた光治療は有用か?」 の推奨は——

醜状瘢痕に混在する毛細血管拡張に対し、レーザーを含めた光治療を行ってもよい(保険適用外)。 推奨の強さと根拠 2B(弱い推奨、中程度の根拠)

「行ってもよい」という水準です。 まず時間と遮光。それでも残る赤みに対しての選択肢、という順序になります。

萎縮性瘢痕(凹み)——ここがいちばん難しい

真皮の組織が失われた状態です。自然には元に戻りません。

日本の2つの指針が、違うことを言っています

これが、この領域を分かりにくくしている理由です。

日本皮膚科学会『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023』

| CQ | 内容 | 推奨度 | |---|---|---| | CQ32 | 萎縮性瘢痕に充填剤注射(コラーゲン、ヒアルロン酸) | C2(行ってもよいが推奨しない・保険適用外に配慮) | | CQ33 | 萎縮性瘢痕にケミカルピーリング | C2(同上) | | CQ42 | 痤瘡あるいは痤瘡瘢痕にレーザー治療 | C2 |

CQ42の理由は明記されています。「設備の問題、本邦での検討が不十分であり、保険適用もないことから推奨はしない」。 つまり——効かないという判定ではありません。

日本形成外科学会『形成外科診療ガイドライン3 2021年版』

一方、こちらの CQ36「醜状瘢痕にフラクショナルレーザーは有効か?」 はこうです。

醜状瘢痕に対してフラクショナルレーザー(保険適用外)は有効である。特にニキビ跡の治療には有効性が高い。 推奨の強さと根拠 2A(弱い推奨、強い根拠)

解説には、こうあります。

複数のRCTにより、ニキビ跡の治療にフラクショナルレーザー、フラクショナルRF(ラジオ波)が有効であると報告されている。(…)大きな合併症の報告はない。

そして「弱い推奨」の理由も書かれています。

有効性は高いが、フラクショナルレーザー治療は保険適用ではないため、推奨の強さと根拠は2Aとした。

2つの学会で評価が分かれています。 そしてどちらも「弱い」理由は、効果ではなく制度(保険適用がないこと)です。

海外のデータは、どうか

56件のRCT・1,488名・34の介入を統合したネットワークメタ解析では、次のように整理されています(PMID: 42429955)。

  • 併用療法が、単独療法をおおむね上回った
  • 最も一貫した効果を示したのは、フラクショナルCO2レーザーとサブシジョンの併用⁠、およびCO2レーザーとPRPの併用
  • 治療選択は、瘢痕の型、肌の色、ダウンタイム、痛み、副作用のリスク、本人の希望を踏まえて決めるべき

さらに、12件のRCT・414名のメタ解析では、意外な結果も出ています。マイクロニードリングにRFを足した群では、瘢痕改善に有意差が出ませんでした(PMID: 35426044)。詳しくはマイクロニードルRFの記事へ。

整理すると——「どの機械か」ではなく「どの組み合わせか」。そして、まず凹みの型を見分けること。

肥厚性瘢痕・ケロイド ——盛り上がっているもの

赤く盛り上がり、硬く、かゆみや痛みを伴うことがあります。①②とは、治療がまったく違います。

『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023』の該当CQは、次のとおりです。

| CQ | 内容 | 推奨度 | |---|---|---| | CQ30 | 肥厚性瘢痕にトラニラスト内服 | C2(臨床試験が行われていない) | | CQ31 | 肥厚性瘢痕にステロイド局所注射 | C1(選択肢の一つとして推奨する) | | CQ34 | 肥厚性瘢痕・ケロイドに外科的切除・冷凍凝固療法 | C2 |

この領域で唯一C1(選択肢の一つとして推奨)を得ているのが、ステロイドの局所注射です。 しかも保険診療の範囲で実施できます。

盛り上がった跡と、凹んだ跡とでは、必要な治療がまったく違います。 型を見分けることが最初になるのは、このためです。

いちばん強い推奨は、「作らせない」ほうについています

ここが、この記事でお伝えしたいいちばん大事なことです。

上に並べた治療は、すべてC1・C2、あるいは2A・2B——「弱い推奨」の範囲です。

一方、同じ『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023』で、推奨度A(強く推奨する)がついているのは、次の3つです。

| CQ | 内容 | 推奨度 | |---|---|---| | CQ27 | 炎症軽快後の寛解維持にアダパレン0.1%ゲル | A | | CQ28 | 炎症軽快後の寛解維持に過酸化ベンゾイル2.5%ゲル | A | | CQ29 | 炎症軽快後の寛解維持にアダパレン/過酸化ベンゾイル配合ゲル | A |

跡を治す治療には「強く推奨する」がひとつもなく、跡を作らせない治療にだけ、それがついています。

そして、形成外科のガイドラインも同じ方向を向いています。CQ9「ざ瘡やピアス刺入後などにケロイドは予防できるか?」(推奨度2C)の推奨文には、こうあります。

ざ瘡に対しては早期に適切な処置を行うことが、ケロイド予防につながる。

2つの学会が、別々の文書で、同じことを言っています。

診察で確認するとよいこと

  1. 私の跡は、①②③のどれですか(混在していることも普通です)
  2. ②なら、凹みの型は何ですか(型によって効く治療が変わります)
  3. 単独ですか、何かと組み合わせますか(併用が単独を上回るという統合解析があります)
  4. 何回で、いくらかかりますか(1回で終わる治療ではありません)
  5. いま出ているニキビを止める治療も、同時にしますか

5番目を聞いてください。 跡を治しながら新しい跡を作り続けていては、進みません。

まとめ

  • ニキビ跡は3つの型に分かれます。指でなでて段差があるかどうかが、いちばん簡単な見分け方です
  • ①赤み・色素沈着 — 瘢痕ではありません。遮光と、触らないこと⁠。長引く赤みには光治療が2B
  • ②凹み — 日本の2つの学会で評価が分かれています⁠。皮膚科はC2⁠、形成外科は2A「有効である。特にニキビ跡には有効性が高い」⁠。どちらも「弱い」理由は保険適用がないこと
  • 海外の統合解析では、併用が単独を上回りました⁠。そしてRFを足した群では有意差が出ませんでした
  • ③盛り上がり — ステロイド局所注射がC1⁠。この領域で唯一の「選択肢の一つとして推奨」です
  • 跡を治す治療に「強く推奨する」はひとつもなく、跡を作らせない外用薬にだけ推奨度Aがついています
  • 形成外科のガイドラインも「ざ瘡に対して早期に適切な処置を行うことがケロイド予防につながる」としています

ニキビ跡の治療は、時間もお金もかかり、そして完全には戻りません。

だからこそ——いま出ているニキビを、跡になる前に止める。2つの学会が、別々の文書で、そこにいちばん強い推奨を置いています。

いま治療中の方は、抗菌薬だけではいけない理由もあわせてお読みください。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。瘢痕の型と適した治療は、診察によって判断されます。実際の判断は医師にご相談ください。

参考文献
  • 日本皮膚科学会 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(CQ27〜34・CQ42)
  • 日本形成外科学会 形成外科診療ガイドライン3 2021年版 創傷疾患 第Ⅲ編(CQ9・CQ35・CQ36)
  • Laser, Microneedling, and Combination Therapies for Moderate to Severe Acne Atrophic Scars: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. Aesthetic Plast Surg. 2026. PMID: 42429955
  • Microneedling Monotherapy for Acne Scar: Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Aesthetic Plast Surg. 2022. PMID: 35426044

※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の治療をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。現時点で当院はこれらの治療を行っておりません。 実際の判断は主治医とご相談ください。

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※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

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