「よく効くので、悪くなるたびに塗っています」
ニキビの抗菌薬について、いちばん多く伺うお話です。そして、この使い方は、いま世界的に見直されています。
理由は2つあります。
①抗菌薬が届くのは、ニキビの原因の一部だけです ②単独で長く使うと、効かない菌が育ちます
そして——日本のガイドラインが「炎症が治まったあとも続けてください」と推奨度Aで勧めているのは、抗菌薬ではありません。 そこまでお話しします。
ニキビには、原因が複数あります
ニキビができるまでには、少なくとも4つのことが同時に起きています。
- 毛穴の出口の角化の異常(詰まる)
- 皮脂の分泌の増加
- アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖
- 炎症
つまり——「詰まり」そのものは、抗菌薬では解けません。
炎症が治まっても、詰まりが残っていれば、また同じところにできます。「良くなるけれど、繰り返す」の理由の多くは、ここにあります。
単独で長く使うと、耐性菌が育ちます
2024年の総説が、この問題の規模を書いています(PMID: 38306149・企業の支援を受けた増刊号に掲載されたもので、利益相反があります)。
何十億もの人が、治療の一部として抗菌薬を受け取ってきた。 その結果、C. acnes だけでなく、他の多くの病原体についても、世界的な薬剤耐性の大流行が生じている。 処方する側は、抗菌薬適正使用(antibiotic stewardship)という考え方を、緊急に受け入れる必要がある。
そして、この総説の中心的な提案は、はっきりしています。
耐性を克服し、予防するために、過酸化ベンゾイル(BPO)を治療のレジメンに組み込むこと。
過酸化ベンゾイルは、細菌に対して「耐性ができにくい」性質を持つ薬です。抗菌薬と一緒に使うことで、耐性菌が育つのを抑える働きが期待されます。
内服の抗菌薬には、体のほうの影響もあります
2025年の総説は、経口抗菌薬の「もう一方の側」を整理しています(PMID: 41187250・これも増刊号で、利益相反があります)。
挙げられているのは、次のようなものです。
- 腸内細菌叢の乱れ
- Clostridium difficile などの感染リスクの上昇
- C. acnes をはじめとする微生物の耐性の上昇
- ワクチンの有効性の低下との関連
- がん免疫療法への反応の低下との関連
最後の2つは、あまり知られていないと思います。「肌のための薬」が、体の別のところに影響しうる、という話です。
著者らの提案は、こうです。狭域スペクトルの抗菌薬を優先し、過酸化ベンゾイルを含む外用の併用療法を組み込むこと。 たとえば、クリンダマイシン・アダパレン・BPOの3剤配合のようなもの。
日本のガイドラインが、推奨度Aで勧めているもの
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
日本皮膚科学会『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023』は、炎症が治まったあとの維持療法について、推奨度Aで勧めています(CQ27〜29)。
そして、そこで勧められているのは、抗菌薬ではありません。
アダパレンや過酸化ベンゾイルといった、詰まりに働く外用薬のほうです。
つまり、治療は2段階です。急性期 — 炎症を抑える。ここで抗菌薬が使われることがあります 維持期 — 詰まりを起こさせない。ここは抗菌薬ではありません
「良くなったから、やめる」ではなく、「良くなったから、切り替える」——これが、ガイドラインの形です。
そして、切り替えたあとを続けることが、推奨度Aで勧められています。
なぜ「期間が決まっている」のか
以上をまとめると、抗菌薬に期間が設定される理由が見えてきます。
- 炎症を抑える役割は、続ける必要がない(維持は別の薬が担います)
- 続けるほど、耐性菌が育つ(②③)
- 単独で使うほど、耐性菌が育つ(②)
だから、「作用の違う薬と組み合わせて、期間を決めて終える」という形になります。
「効いたから、ずっと使う」は、ここと逆を向いています。
実際に、どうすればいいか
- 手元に残った抗菌薬を、自己判断で塗り足さない
- 「良くなったからやめる」の前に、「次に何に切り替えるか」を聞く(④が理由です)
- しみて続けられないときは、黙ってやめずに相談する。量や頻度の調整で続けられることが多くあります
- 冬にしみやすくなることがあります。 バリアの側の話は冬の乾燥の記事に書きました
- 跡になる前に受診する。 ニキビ跡は、できてからのほうが治療が難しくなります。ニキビ跡の記事へ
食事との関係については食べ物の記事に、菌活・プロバイオティクスについては肌の菌活の記事に、それぞれ確かめられている範囲を書きました。
まとめ
- ニキビには原因が複数あり、抗菌薬が届くのは「菌」と「炎症」です。「詰まり」は解けません
- 世界的に、C. acnes だけでなく他の病原体についても薬剤耐性が広がっています(PMID: 38306149・利益相反あり)
- 耐性の克服と予防のために、過酸化ベンゾイルをレジメンに組み込むことが求められています
- 経口抗菌薬は、腸内細菌叢の乱れ、C. difficile 感染、ワクチン有効性の低下、がん免疫療法への反応低下とも関連が挙げられています(PMID: 41187250・利益相反あり)
- 日本のガイドラインが推奨度Aで勧める維持療法は、抗菌薬ではなくアダパレンや過酸化ベンゾイルです(痤瘡GL2023 CQ27〜29)
- 「良くなったからやめる」ではなく「良くなったから切り替える」
- 残った薬を自己判断で塗り足さないでください
抗菌薬は、よく効く薬です。よく効くからこそ、使い方に決まりがあります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。処方された薬を自己判断で中止・継続しないでください。治療の内容は重症度や部位、これまでの経過によって変わります。必ず主治医にご相談ください。
参考文献- 日本皮膚科学会 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(CQ27〜29・維持療法/推奨度A)
- INDIVIDUAL ARTICLE: Antibiotic Stewardship in Acne: 2023 Update. J Drugs Dermatol. 2024. PMID: 38306149(企業支援の増刊号・利益相反あり)
- The Dark Side of Oral Antibiotics: Adverse Events of Consideration in Dermatology. J Drugs Dermatol. 2025. PMID: 41187250(増刊号・利益相反あり)
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の治療をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。現時点で当院は診療を行っておりません。 実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

