「ピコレーザーでシミを取りたいのですが」
このご相談で最初に必要なのは、機械の説明ではありません。そのシミが何なのかを分けることです。
顔の色ムラは、少なくとも次の2つに分かれます。
| | 老人性色素斑 | 肝斑 | |---|---|---| | 見た目 | 輪郭がはっきりした、濃い茶色の斑 | 輪郭がぼやけた、左右対称の薄い色ムラ | | 場所 | 頬骨の上など、日光の当たる場所 | 頬の高い位置、口のまわり、額 | | 経過 | 一度できると自然には消えにくい | 濃くなったり薄くなったりする |
そして——ピコレーザーの成績は、この2つでまったく違います。
一方では上位に来る。もう一方では、波長によって外用薬に勝てず、かえって色素沈着を起こす。同じ機械の話です。
老人性色素斑 ——ここでは、強い
2025年に報告された系統的レビューが、老人性色素斑(solar lentigines)の治療を横並びで比較しています。41件の臨床試験・3,234名(24〜92歳)を集めたものです。
有効率は、次のとおりでした(PMID: 40145274)。
| 治療 | 有効率 | |---|---| | ピコ秒レーザー | 67.9〜93.02% | | 強力パルス光(IPL) | 74.6〜90% | | Qスイッチレーザー | 36.36〜76.6% | | 冷凍療法 | 37〜71.4% | | 色素レーザー | 27〜57% | | TCAによるケミカルピーリング | 12〜46% | | フラクショナルCO2レーザー | 8〜23% |
外用では、メキノール2%とトレチノイン0.01%の併用が最も有効で、52.6%から80%超(特に顔の病変)とされています。
有害事象は、多くが軽度で一過性でした。色素レーザーとIPLは炎症後色素沈着との関連が少なく、一方で冷凍療法はより重い副作用と関連していました。
著者らの結論は「レーザー治療が他の方法より有効そうであり、安全性も許容できる。レーザーと特定の外用薬を組み合わせることで、さらに結果を改善し、炎症後色素沈着を減らせる可能性がある」。ただし大規模なランダム化試験による確認が必要とも述べています(PMID: 40145274)。
ここで見落とされがちな点があります。 ピコ秒レーザーの上限(93%)は確かに高いのですが、IPLも74.6〜90%です。「ピコでなければ取れない」わけではありません。
肝斑 ——ここで、話が変わります
肝斑に対するピコ秒レーザーを調べたメタ解析があります。6件のランダム化比較試験を統合したものです。
全体としては、肝斑の重症度スコア(MASI/mMASI)を有意に減少させました。ただし研究間のばらつきが非常に大きい(I²=70%)という条件つきです。
そして、波長で分けたサブグループ解析が、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
1064nm — 重症度スコアを有意に減少させ、目立った副作用はなかった(P=0.04)
755nm — 外用の美白剤と比べて有意な改善を示さず(P=0.08)、しかも炎症後色素沈着を起こした
著者らの結論は、「1064nmのピコ秒レーザーは肝斑の治療に安全かつ有効である。755nmのピコ秒レーザーは、外用の美白剤に優らない」。その他の波長については、症例数が足りず解析できなかったとしています(PMID: 36897459)。
つまり、こういうことです。「ピコレーザーは肝斑に効きますか」という問いに、機械の名前だけでは答えられません。 何nmで、どういう設定で当てるのか。そこまで決まって初めて、効くとも効かないとも言えます。
そして肝斑は、間違った当て方をすると悪化する——外用薬に勝てないどころか、色素沈着を作ってしまう。それがこのデータの示すところです。
診察で、必ず確認していただきたいこと
ここまでを踏まえると、聞くべきことははっきりします。
- 私のこれは、老人性色素斑ですか、肝斑ですか、それとも両方ですか 顔には、この2つが混在していることがよくあります。混在している場合、同じ設定で全部に当てると、肝斑の側が悪化します
- 何nmの波長で当てますか 肝斑に対しては、メタ解析で1064nmと755nmの結果が分かれています
- 外用や内服は、先に始めますか 肝斑は慢性で再発する状態です。機械だけで終わる治療ではありません
- 日焼けをしています。時期をずらしたほうがいいですか 照射後の色素沈着リスクに直結します
- 効かなかったとき、次はどうしますか
「シミですね、ピコで取りましょう」で終わる説明だったら、鑑別をしていない可能性があります。 別の医療機関の意見も聞いてみてください。
知っておいていただきたい限界
- 肝斑のメタ解析は6件のRCTで、異質性が高い(I²=70%)状態です
- 老人性色素斑のレビューは41試験3,234名と規模がありますが、著者ら自身が大規模RCTでの確認が必要としています
- 有効率の幅(67.9〜93.02%)が広いのは、研究ごとに評価方法も対象も違うためです。この数字を「10人中9人は取れる」と読むのは、やや踏み込みすぎです
- 老人性色素斑は取れても、日光を浴び続ければまた出ます。遮光を土台に置かないと、繰り返すことになります
まとめ
- 「シミ」と「肝斑」を分けないと、答えが逆になります
- 老人性色素斑では、ピコ秒レーザーの有効率は67.9〜93.02%で上位。ただしIPLも74.6〜90%です
- 肝斑では、6件のRCTのメタ解析で波長により結果が分かれました
- 1064nmは有意に改善し副作用も目立たず、755nmは外用の美白剤に優らず、炎症後色素沈着を起こしました
- 顔に両方が混在していることは珍しくありません。同じ設定で全部に当てると、肝斑側が悪化します
- 老人性色素斑は取れても、遮光を土台に置かなければ再発します
機械の性能を比べる前に、何を相手にしているかを決める。 順序を逆にすると、うまくいかないだけでなく、悪くなることがあります。
そして——鑑別をきちんとしてくれる医師を選ぶこと。 それが、この領域でいちばん結果を分ける要素だと考えています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。色素性の病変には、まれに悪性のものが含まれます。自己判断せず、必ず診察を受けてください。
参考文献- Efficacy and safety of picosecond laser for the treatment of melasma: a systematic review and meta-analysis. Lasers Med Sci. 2023. PMID: 36897459
- Treatment of Solar Lentigines: A Systematic Review of Clinical Trials. J Cosmet Dermatol. 2025. PMID: 40145274
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の治療をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。現時点で当院はこの治療を行っておりません。 実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

