Dear You,
ビタミンCの化粧品を選ぼうとして、成分表を見た瞬間に手が止まったことはありませんか。
APPS、THDA、リン酸アスコルビルNa、パルミチン酸アスコルビル。カタカナとアルファベットが並んでいて、どれがいいのか見当もつかない。「高浸透型」と書かれていると、なんとなくそれが良さそうに思えてきます。
今日は、この分野で分かっていることと、まだ分かっていないことを、正直にお伝えしたいと思います。
なぜ、誘導体がこんなに多いのか
ビタミンCそのもの(L-アスコルビン酸)には、化粧品にするうえで二つの困りごとがあります。
ひとつは不安定なこと。水や空気、光に触れると壊れやすく、時間とともに効果が落ちていきます。ふたつめは肌に入りにくいこと。水になじむ性質のため、油の膜である角層を通り抜けるのが得意ではありません。
そこで、分子に手を加えて、この二つを改善しようとしたのが「誘導体」です。2012年と2021年に発表された総説では、それぞれの誘導体がどういう考え方で設計されたかが整理されています。
大まかに言うと、水になじむタイプ(リン酸アスコルビルNaなど)は安定性を重視した設計です。一方、油になじむタイプ(THDAなど)は角層を通りやすくすることを狙っています。そしてAPPSは、水と油の両方の性質を一つの分子に持たせようとしたものです。
「両方の性質を持つ」というのは、設計としては理にかなっています。ただし、それがそのまま「効果が高い」ことを意味するわけではありません。
ここからが、大事なところです
「APPSは他より優れている」という説明をよく見かけます。しかし、それを確かめた、人を対象とする直接の比較試験は、ほとんど見当たりません。
分かっているのは、試験管の中や、皮膚のモデルを使った実験での、通過しやすさや安定性の違いです。それは意味のあるデータですが、「肌の上でシミが薄くなる」「ハリが出る」といった結果を比べたものではありません。
肌に入りやすいことと、入ったあとに働くことは、別の話です。誘導体は肌の中で酵素によってビタミンCに変換されて初めて働きますが、この変換がどれくらい効率よく起きるかも、誘導体によって違います。つまり、「通りやすさ」だけでは結論が出ません。
なお、この分野の総説の一部は化粧品会社に所属する著者によって書かれています。内容が誤りだという意味ではありませんが、利害関係のある立場から書かれたものが含まれることは、知っておいていただいてよいと思います。
では、どう選べばいいのか
身も蓋もない言い方になりますが、「この誘導体を選べば正解」という答えは、いまのところありません。
そのうえで、現実的にお伝えできることがいくつかあります。
続けられるものを選ぶこと。 どんな成分も、使い続けなければ意味がありません。刺激を感じるもの、香りが苦手なもの、値段が続かないものは、結局やめてしまいます。
濃度が高ければ良いわけではないこと。 高濃度のものは刺激も強くなります。ヒリつきを我慢して使うと、かえって肌荒れを招きます。
容器と使い切りに気を配ること。 ビタミンCは酸化しやすいので、遮光された容器か、小分けのものを選び、開封したら早めに使い切るほうが理にかなっています。
日焼け止めと組み合わせること。 ビタミンCの化粧品を使う目的の多くは、シミや色ムラのケアです。紫外線を防がずにこれだけを続けるのは、穴の開いたバケツに水を注ぐようなものです。
おわりに
「新しい誘導体だから、きっと効くはず」と思いたくなる気持ちは、私もよく分かります。実際、設計としてはよく考えられたものが増えています。
ただ、設計が優れていることと、人の肌で効果が確かめられていることは、別のことです。そこを区別してお伝えするのが、誠実な向き合い方だと思っています。
いまお使いのものが肌に合っていて、続けられているのなら、それを変える理由は特にありません。焦らず、続けられるかたちで。それがいちばんの近道だと思います。
参考文献
- A review of topical vitamin C derivatives and their efficacy J Cosmet Dermatol. 2021. PMID: 34559950
- Stability, transdermal penetration, and cutaneous effects of ascorbic acid and its derivatives J Cosmet Dermatol. 2012. PMID: 23174055
※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

