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Injectable2026-06-29

脂肪溶解注射(デオキシコール酸)の数字を、そのまま読む|2段階の改善は18.6%でした

Dr. みやか

Dr. みやか

10 min read

「注射で、脂肪が溶けるんですよね」

デオキシコール酸(ATX-101)については、規模の大きな第3相試験があります。この分野では、珍しいほど、きちんと調べられています。

だからこそ、数字をそのまま読む価値があります。そして、読むと分かることが3つあります。

①調べられたのは「顎の下」だけです ②1段階以上の改善は66.5%。2段階以上は18.6%です ③プラセボ群でも、22〜34%が改善しています


調べられたのは、顎の下だけです

REFINE-1・REFINE-2と呼ばれる第3相試験(PMID: 27430612)も、それ以前の第3相試験(PMID: 24605812)も、対象は「顎の下の脂肪(submental fat)」です。

太もも・お腹・二の腕を対象にした第3相試験は、ここには含まれていません。

日本で「脂肪溶解注射」として案内されるものの多くは、体の別の部位が対象です。顎下の試験の数字を、そのまま他の部位に当てはめることはできません。

数字を、そのまま並べます

REFINE-2(PMID: 27430612)。中等度または重度の顎下脂肪に不満のある成人を、ATX-101群とプラセボ群に無作為に割り付けました。各群258人です。

最終治療から12週後の評価です。

1段階以上の改善(医師と患者の両方の評価スケールで):66.5% 対 プラセボ22.2% (リスク比 2.98、95%信頼区間 2.31〜3.85)

2段階以上の改善:18.6% 対 プラセボ3.0% (リスク比 6.27、95%信頼区間 2.91〜13.52)

MRIによる顎下の体積減少も、ATX-101群のほうが達成しやすかった。 有害事象の85.7%は、注射部位に限局していた。

2段階以上の改善は、5人に1人弱です。

「効果があった」という言葉が、どちらの数字を指しているかで、話がまったく変わります。

プラセボ群の数字を、必ず一緒に見てください

もう1本の第3相試験(PMID: 24605812)は、360人を対象にしたものです。

1段階以上の改善:ATX-101 1mg/cm² で58.3%、2mg/cm² で62.3% プラセボ群:34.5%

顔と顎の見た目への満足:68.3%・64.8% 対 プラセボ29.3%

プラセボ群の3人に1人が「改善した」と評価されています。

これは、この分野を読むうえで欠かせない視点です。「治療を受けた」という事実そのものが、評価を動かします。だから、プラセボ群のない報告——たとえば施術前後の写真だけ——では、何も判断できません。

この試験がしっかりしているのは、まさにこの比較があるからです。

回数と、持続について

6回まで受けられる設計でしたが、実際は(PMID: 29401213・事後解析です)——

大半の患者が、2〜4回の施術で1段階以上の改善に到達した。 19.1%は、満足したか、対象となる脂肪が残っていないため、6回未満で終了した。 注射部位の一般的な有害事象は、回数を重ねるにつれて頻度・重症度とも低下した。

3年後の追跡もあります(PMID: 33617632)。

3年時点で、1段階以上の改善を維持していたのは 82.4% 対 プラセボ65.0%(p = 0.03)。 新たな安全性の懸念は生じなかった。

ここは、注意して読む必要があります。
  • この追跡研究は、「12週の時点で改善していた人」だけを集めています。効かなかった人は、最初から入っていません
  • プラセボ群でも65%が維持しています。顎下の脂肪は、そもそも短期間で大きく戻るものではない、とも読めます

受ける前に、知っておいていただきたいこと

この治療は、脂肪の細胞そのものを壊すものです。それは、効果の理由であると同時に、リスクの理由でもあります。

  • 注射部位に、腫れ・硬結・痛み・内出血・しびれが出ます。 試験でも有害事象の大半は注射部位でした
  • 顎の下には、神経が走っています。海外の添付文書には、顔面神経下顎縁枝の障害(口角の左右差)や嚥下障害の報告が記載されています
  • 打つ場所を誤ると、脂肪以外の組織にも作用します。解剖を知っている医師が、適切な深さと範囲で打つ必要があります
  • 2〜4回が前提です。 1回で完結する治療ではありません

カウンセリングで聞いていただきたいこと

  • 「何段階の改善」を目指す説明ですか(②のとおり、1段階と2段階では割合が3倍以上違います)
  • その部位で行われた試験はありますか(①のとおり、第3相試験は顎下です)
  • 使うのはどの製剤で、国内で承認されていますか
  • 何回で、総額はいくらですか
  • 副作用が出たとき、どこまで対応してもらえますか

まとめ

  • 第3相試験の対象は「顎の下の脂肪」です⁠。他の部位の試験は含まれていません
  • 1段階以上の改善は66.5%(プラセボ22.2%)、2段階以上は18.6%(プラセボ3.0%)(PMID: 27430612)
  • 別の第3相試験では、プラセボ群の34.5%が1段階以上の改善と評価されました(PMID: 24605812)
  • 多くは2〜4回で1段階以上の改善に到達(PMID: 29401213・事後解析)
  • 3年後も82.4%が維持。ただし「効いた人だけ」を追跡した研究で、プラセボ群も65%が維持(PMID: 33617632)
  • 有害事象の大半は注射部位に限局。 神経障害の報告もあり、打つ場所の知識が要ります
  • 「効果があった」がどの数字を指すのかを、必ず確かめてください

この治療は、きちんと調べられているほうです。だからこそ、数字をそのまま見ることができます。


未承認医薬品についてのご案内(医療広告ガイドラインに基づく記載)

デオキシコール酸注射剤(ATX-101・海外製品名 KYBELLA/BELKYRA 等)

  • 未承認医薬品です。 日本国内で薬機法に基づく承認を受けていません。
  • 入手経路: 医師の責任のもと、薬監証明を経て輸入されるものです。厚生労働省「個人輸入において注意すべき医薬品等について」 もあわせてご確認ください。国内では、この成分を含む院内調製品や海外製品が用いられることがあり、製品ごとに組成が異なります。
  • 国内承認品の有無: 同一の効能・効果で国内承認されている医薬品はありません。
  • 諸外国での承認と安全性情報: 米国・カナダ・欧州の一部で、成人の顎下脂肪(submental fat)に対して承認されています。承認されている部位は顎下であり、他の部位は承認の対象外です。
  • 医薬品副作用被害救済制度の対象外です。

主なリスク: 注射部位の腫脹・硬結・疼痛・内出血・しびれ・紅斑(試験では有害事象の85.7%が注射部位に限局)。顔面神経下顎縁枝の障害による口角の左右差、嚥下障害が報告されています。注射部位の潰瘍・壊死の報告もあります。嚥下障害のある方、注射部位に感染がある方には行いません。

壊れた脂肪細胞は元に戻りません。取りすぎた場合、元に戻す方法はありません。

参考文献
  • ATX-101 for reduction of submental fat: A phase III randomized controlled trial. J Am Acad Dermatol. 2016. PMID: 27430612(著者に製薬企業所属者を含む)
  • Efficacy, patient-reported outcomes and safety profile of ATX-101 (deoxycholic acid). J Eur Acad Dermatol Venereol. 2014. PMID: 24605812(プラセボ群も34.5%が改善)
  • Efficacy and Safety of ATX-101 by Treatment Session: Pooled Analysis of Data From the Phase 3 REFINE Trials. Aesthet Surg J. 2018. PMID: 29401213(事後解析・著者に製薬企業所属者を含む)
  • Improvements in Submental Contour up to 3 Years After ATX-101. Aesthet Surg J. 2021. PMID: 33617632(効果があった人のみを追跡・著者に製薬企業所属者を含む)

※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の治療をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。現時点で当院はこの治療を行っておりません。 実際の判断は主治医とご相談ください。

Dr. Miyaka Signature

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

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