「ポテンツァって、結局なんの機械なんですか」 「ニキビ跡にも毛穴にも肝斑にも効くと書いてありますが、本当ですか」
同じ機械でも、狙う悩みによって根拠の厚みはまったく違います。 ここを一緒くたにすると、判断を誤ります。
先にこの記事の結論を書きます。
| 狙う悩み | 根拠の厚み | |---|---| | 肝斑 | 12研究をまとめた系統的レビューがある。ただし質的統合(メタ解析ではない) | | ニキビ跡 | メタ解析はある。しかし「RFを足したほうが良い」とは言えていない | | 毛穴 | 比較した研究を見つけられていません |
「万能」という言葉から、いちばん遠いところにある機械です。順にお話しします。
そもそも何をしている機械なのか
マイクロニードルRFは、名前のとおり2つの要素でできています。
- マイクロニードル — 髪より細い針を皮膚に刺す
- RF(高周波) — 針の先端から高周波を流し、その深さで熱を発生させる
普通のレーザーは、光が皮膚の表面から入って目的の深さまで届きます。通り道である表皮も、必ず影響を受けます。 これが色素沈着(炎症後色素沈着)の一因になります。日本人を含むアジアの肌では、ここが常に問題になります。
マイクロニードルRFは発想が違います。針で真皮まで先に到達しておき、そこで初めて熱を出す。 表皮は針が通った点だけで済みます。「表皮を温存して、真皮だけに熱を入れる」——これがこの機械の設計思想です。
理屈としては、とてもよくできています。問題は、理屈が良いことと、比較試験で勝つことが別だという点です。
ニキビ跡 ——いちばん期待される用途で、いちばん意外な結果
ニキビ跡を目的に検討される方が最も多いと思います。ここから見ていきます。
2022年に報告されたメタ解析は、12件のランダム化比較試験・414名を統合しました。マイクロニードリングを他の治療と比べたもので、次の2つに分けて解析されています。
- RFなしのマイクロニードリング → 瘢痕の客観的改善で、有意な差が出た
- フラクショナルRFマイクロニードリング → 有意な差は出なかった
著者らの結論は、「RFを伴わないマイクロニードリングのほうが、瘢痕改善において優れた結果を示した」というものでした。患者さん自身の満足度については、多くの比較で有意差がありませんでした(PMID: 35426044)。
意外に思われるかもしれません。私も、この結果は正直にお伝えするべきだと考えています。針に高周波を足したほうが強力そうに見えますが、比較試験を統合すると、そうは出ていない。 少なくとも、現時点ではそうです。
同じ解析で、炎症後色素沈着についてはマイクロニードリング側が有利でした。冒頭に書いた「表皮を温存する」という設計思想は、こちらの面では裏づけられています。
では、ニキビ跡には何が効くのか。2026年に報告されたネットワークメタ解析が、そこに踏み込んでいます。56件のランダム化比較試験・1,488名・34の介入を統合したこの研究では、次のように整理されました。
- 併用療法が、単独療法をおおむね上回った
- 最も一貫した効果を示したのは、フラクショナルCO2レーザーとサブシジョン(線維の癒着を剥がす処置)の併用、およびCO2レーザーとPRPの併用
- マイクロニードルRFに線維芽細胞増殖因子を組み合わせたものは、瘢痕スコアで上位に来たが、著者らは「さらなる検証が必要」としている
- 治療選択は、瘢痕の型、肌の色(Fitzpatrick分類)、ダウンタイム、痛み、副作用のリスク、ご本人の希望を踏まえて決めるべきである(PMID: 42429955)
ここが実務上いちばん大事な部分です。 ニキビ跡の治療は、「どの機械か」ではなく「どの組み合わせか」で決まります。そして組み合わせを決めるには、まず凹みの型を見分ける必要があります。
凹みの型については、ニキビ跡には3つの型がありますで詳しくお話ししています。型が違えば効く治療も違う、というのがこの領域の基本です。
肝斑 ——こちらは、相対的に分がいい
一転して、肝斑ではこの機械の立場が変わります。
2026年に報告された系統的レビューは、12件の臨床研究を集めました。マイクロニードルRFは肝斑の重症度スコア(MASI)とメラニン指数を一貫して改善し、効果は6ヶ月まで維持されたと報告されています。組織学的には、真皮の老化マーカーの減少と基底膜の部分的な回復が見られたとされます。
そして肝斑の治療で最も恐れられる炎症後色素沈着が、濃い肌色の方でも少なかった——ここが、色素を直接狙うレーザーに対する優位点として挙げられています。また、低フルエンスのQスイッチNd:YAGレーザーとの併用が、単独よりも色素の減少が大きかったとされています(PMID: 42253423)。
ただし、証拠の水準は正しく見てください。 これはメタ解析ではなく質的統合です。研究ごとのばらつきが大きく、数値をまとめられなかったため、記述的に整理されています。著者自身も、エビデンスレベルを3(治療研究として中程度)と申告しています。
個別の試験としては、2024年に30名を対象とした分割顔ランダム化比較試験があります。難治性の肝斑に対し、片側にマイクロニードルRFとシステアミン外用、反対側にRFと生理食塩水を用いた比較で、システアミン併用側で有意な改善が報告されました。ただし30名という規模であり、決定的な結論ではありません(PMID: 39574411)。
まとめると、肝斑については——「有望で、色素沈着のリスクが比較的低い選択肢のひとつ。ただし単独よりも組み合わせ。そして証拠の質はまだ中程度」というのが、現時点で言える範囲だと考えています。
なお肝斑は、慢性で再発しやすい状態です。機械で一度きれいにして終わり、という病気ではありません。 内服・外用・遮光を土台に置いたうえで、機械はその補助という順序になります。
毛穴 ——ここは、正直にお伝えします
「毛穴の開きに効きます」という説明をよく見かけます。
この記事では、それを裏づける比較試験を挙げられません。 毛穴を主要な評価項目に置いた、まとまった比較データを見つけられなかったためです。
真皮のコラーゲンが増えれば毛穴の縁が持ち上がって目立ちにくくなる——という機序は、理屈として理解できます。ニキビ跡の改善に伴って毛穴の見え方が変わることもあるでしょう。しかし「機序として説明できる」ことと「比べて確かめられている」ことは違います。
出典を示せないものを、示せるかのように書かない。ここは、そのまま空白としてお伝えしておきます。
日本のガイドラインは、この治療をどう位置づけているか
ここまでは海外の統合解析の話でした。日本の学会が、この治療をどう見ているかもお伝えします。
日本皮膚科学会の『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023』には47のクリニカルクエスチョンが置かれ、そのうち CQ42が「痤瘡あるいは痤瘡瘢痕にレーザー治療は有効か?」を扱っています。
推奨度は C2(行ってもよいが、推奨はしない)。推奨文はこうです。
各種レーザー治療器の特性を理解した上で、治療効果が期待できる痤瘡あるいは痤瘡瘢痕に、レーザー治療を行ってもよいが、設備の問題、本邦での検討が不十分であり、保険適用もないことから推奨はしない。
そしてこのCQの解説の中に、マイクロニードルRFにあたる「fractional RF」が名指しで登場します。
Radio frequency(RF、ラジオ波)を用いた fractional RF に関しては、萎縮性瘢痕に対するRCT・左右比較試験にて non-ablative fractional laser と有意差なく有効とする報告がある。国外の複数の治療前後比較試験のレビューによれば、fractional RF治療後、軽症から中等症の萎縮性瘢痕患者の70%以上に改善がみられたとされ、本邦の前後比較試験でも、中等度以上の改善が軽度の萎縮性瘢痕病変の半数以上で認められたとする報告がある。
そのうえでの結論が、この一文です。
Fractional laser や fractional RF については、本邦での前後比較試験もあり、他の治療で効果の得られない難治性の萎縮性瘢痕には試みてもよいが、推奨はしない。今後の本邦におけるエビデンスの集積が必要である。
(日本皮膚科学会 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023)
もうひとつの学会は、違う評価をしています
ここで、話が少し込み入ります。
日本形成外科学会が策定した『形成外科診療ガイドライン3 2021年版 創傷疾患』の第Ⅲ編(ケロイド・肥厚性瘢痕)に、CQ36「醜状瘢痕にフラクショナルレーザーは有効か?」という項目があります。
推奨文は、こうです。
醜状瘢痕に対してフラクショナルレーザー(保険適用外)は有効である。特にニキビ跡の治療には有効性が高い。
推奨の強さと根拠 2A(弱い推奨、強い根拠)
そして解説の中に、こうあります。
複数のRCTにより、ニキビ跡の治療にフラクショナルレーザー、フラクショナルRF(ラジオ波)が有効であると報告されている。(…)フラクショナル治療に伴う皮膚の炎症や疼痛の強さ、そしてその持続は機器により異なるが、大きな合併症の報告はない。
「弱い推奨」になっている理由も、明記されています。
ニキビ瘢痕や面状瘢痕に対するフラクショナルレーザーの有効性は高いが、フラクショナルレーザー治療は保険適用ではないため、推奨の強さと根拠は2Aとした。
(日本形成外科学会 形成外科診療ガイドライン3 2021年版 創傷疾患)
同じ編には、CQ35「醜状瘢痕に混在する毛細血管拡張にレーザーを含めた光治療は有用か?」もあり、こちらは2B(弱い推奨、中程度の根拠)で「行ってもよい」とされています。ニキビ跡に残る赤みに対しては、光治療が別枠で評価されている、ということです。
3つを並べると、こうなります
| 誰が | 何と言っているか | |---|---| | 海外のメタ解析(2022) | RFを足した群は、瘢痕改善で有意差が出なかった | | 日本皮膚科学会(2023) | 痤瘡瘢痕へのレーザー治療はC2(設備・国内データ・保険がないため推奨しない) | | 日本形成外科学会(2021) | フラクショナルレーザー/RFは有効である。特にニキビ跡には有効性が高い(2A・強い根拠。弱い推奨の理由は保険適用外) |
評価が割れています。 これを「どれかが間違っている」と読むのは、たぶん違います。
- 海外のメタ解析は、RFを足すことの上乗せ効果を、他の治療と比べて統計的に検証した
- 形成外科のガイドラインは、フラクショナル治療全体としての有効性を、複数のRCTから評価した
- 皮膚科のガイドラインは、日本の保険診療の中で標準治療として推奨できるかを評価した
問いが違えば、答えが違う。 そして3つに共通しているのは、「弱い」とされる理由が、効果ではなく制度(保険適用がないこと・国内データが少ないこと)にあるという点です。
「C2=効かない」ではありません。 C2は「行ってもよいが、推奨はしない」であり、その理由としてガイドライン自身が設備・国内データの不足・保険適用がないことを挙げています。医学的に無効だという判定ではない、という読み方が正確です。
同時に、日本の学会が置いた位置づけは明確です。
他の治療で効果が得られない、難治性の萎縮性瘢痕に、試みてもよい。
つまり——最初に出てくる選択肢ではありません。 保険診療の範囲でできること(外用による治療と、瘢痕を作らせない維持療法)を土台に置いたうえで、それでも残る凹みに対して検討するもの。それが、日本のガイドライン上のこの治療の居場所です。
なお同じガイドラインは、炎症が軽快したあとの寛解維持について、アダパレン0.1%ゲル、過酸化ベンゾイル2.5%ゲル、その配合ゲルの3つに推奨度A(強く推奨する)を与えています。瘢痕をできてから治すより、作らせないほうに、はるかに強い推奨がついている——ここは、ぜひ知っておいてください。
痛み・ダウンタイム・向かない方
- 痛み: 針を刺して熱を出すため、麻酔クリームを使用したうえでも痛みを感じることがあります
- 直後: 赤みとむくみは、ほぼ全ての方に生じます。数時間から3〜4日で落ち着きます
- その他: 点状出血、一時的なニキビの悪化が起こることがあります
- 炎症後色素沈着: 表皮を温存する設計とはいえ、ゼロではありません。日焼けした直後の肌では、リスクが上がります
- 熱傷・瘢痕: 頻度は高くありませんが、報告があります
- 回数: 1回では変わりません。 数回を4〜6週間隔で重ねる前提の治療です
受ける前に、聞いておくとよいこと
ここまでの内容を踏まえると、診察で確認すべきことははっきりします。
- 私の凹みは、どの型ですか — 型によって、この機械が向くかどうかが変わります
- 単独ですか、何かと組み合わせますか — ニキビ跡では併用のほうが成績が良いという統合解析があります
- 何回で、いくらかかりますか — 1回で終わる治療ではありません
- 日焼けしています。時期をずらしたほうがいいですか — 色素沈着のリスクに直結します
- 効かなかった場合、次の選択肢は何ですか — ここを先に聞いておくと、判断が楽になります
まとめ
- ポテンツァは針で真皮に届いてから熱を出す機械。表皮を温存する設計で、色素沈着の面ではその狙いが裏づけられています
- ニキビ跡: 12件のRCT・414名のメタ解析では、RFを足した群で有意差が出ませんでした。「RFがあるほうが強い」とは、現時点では言えません
- ニキビ跡は「どの機械か」より「どの組み合わせか」。56件のRCT・1,488名のネットワークメタ解析では、併用が単独を上回りました
- 肝斑: 12研究の系統的レビューで一貫した改善。濃い肌色でも色素沈着が少ない点が利点。ただし質的統合であり、証拠の水準は中程度
- 毛穴: 裏づけとなる比較データを挙げられません
- 日本のガイドライン(2023)は、痤瘡瘢痕へのレーザー治療を推奨度C2とし、fractional RFについて 「他の治療で効果の得られない難治性の萎縮性瘢痕には試みてもよいが、推奨はしない」としています
- 同じガイドラインで推奨度A(強く推奨)がついているのは、瘢痕を作らせないための寛解維持の外用薬のほうです
- ただし日本形成外科学会のガイドライン(2021)は、フラクショナルレーザー/RFを「有効である。特にニキビ跡には有効性が高い」(2A・強い根拠)と評価しています。 弱い推奨になっている理由は保険適用がないことであり、効果への疑義ではありません
- 1回では変わりません。 複数回・数ヶ月の前提で考えてください
この機械は、「万能」ではありません。悩みごとに、立っている足場の固さが違う。 そこを知ったうえで選べば、期待と結果のずれは小さくなります。
そして——根拠が薄い部分について「まだ分かっていません」と言ってくれる医師を選んでください。 それが、いちばん確かな目印だと思います。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。適応の有無や治療の組み立ては、肌の状態によって大きく変わります。実際の判断は、診察を受ける医師にご相談ください。
参考文献- Microneedling Monotherapy for Acne Scar: Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Aesthetic Plast Surg. 2022. PMID: 35426044
- Laser, Microneedling, and Combination Therapies for Moderate to Severe Acne Atrophic Scars: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. Aesthetic Plast Surg. 2026. PMID: 42429955
- The Efficacy and Safety of Radiofrequency Microneedling for Melasma: A Systematic Review and Qualitative Evidence Synthesis. Aesthet Surg J Open Forum. 2026. PMID: 42253423
- Efficacy and Safety of Combination Therapy of Microneedling Radiofrequency, In-Office and Home-Based Topical Cysteamine in Refractory Melasma: A Split Face, Vehicle-Control, Randomized Control Trial. J Cosmet Dermatol. 2024. PMID: 39574411
- 日本皮膚科学会 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(CQ42・CQ27〜29)
- 日本形成外科学会 形成外科診療ガイドライン3 2021年版 創傷疾患 第Ⅲ編(CQ35・CQ36)
未承認医薬品・医療機器についてのご案内
POTENZA prime(マイクロニードルRF)
- 未承認である旨: 未承認医療機器です。日本国内で薬機法に基づく承認を受けていません。
- 入手経路: 医師の責任のもと輸入しています。厚生労働省「個人輸入において注意すべき医薬品等について」 もあわせてご確認ください。
- 国内の承認医療機器の有無: 同じマイクロニードルRFの技術を用いた機器として、シークレットRF(管理医療機器・認証番号 305AGBZI00010000/2023年9月)とモフィウスプロ(高度管理医療機器・承認番号 30700BZX00257000/2025年10月)が、国内で薬機法上の認証・承認を受けています。承認された代替機器が存在します。
- 諸外国での安全性等の情報: 韓国MFDSの承認および米国FDAの510(k)を取得していますが、これは日本国内の承認とは別のものです。海外で報告されている主な有害事象は、炎症後色素沈着、遷延する紅斑、熱傷、瘢痕です。
- 医薬品副作用被害救済制度の対象外です。 個人輸入された医薬品・医療機器の使用により健康被害が生じた場合、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の救済制度による給付を受けられません。
- 主なリスク・副作用: 施術後の赤み・むくみ(ほぼ全ての方に生じ、数時間〜3〜4日で消退します)、痛み、点状出血、炎症後色素沈着、一時的なニキビの悪化。頻度は高くないものの、熱傷・瘢痕の報告があります。複数回(目安5回・4〜6週間隔)の施術が必要で、1回では変化しません。
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の治療をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。現時点で当院はこの治療を行っておりません。 実際の判断は主治医とご相談ください。
※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

