「自分の血液を使うので、安全です」——そう説明されることの多い治療です。
この2つは、分けて考える必要があります。- 安全か — 自分の血液を戻すので、アレルギーや拒絶反応のリスクは低い。これは筋が通っています
- 効くか — まったく別の問いです。 安全であることは、効くことの根拠になりません
今日は後者、効くかどうかについて、いま出ている最も上位のデータをそのままお伝えします。
そもそも何をしているのか
PRP(多血小板血漿)は、自分の血液を採取し、遠心分離機にかけて血小板の濃度が高い層を取り出したものです。それを肌に注入します。
血小板は、傷ができたときに最初に集まる細胞です。傷を治すための成長因子を放出し、線維芽細胞に「組織を作り直せ」という信号を送ります。その働きを、傷のない肌に対して意図的に使う——というのが、この治療の発想です。
発想としては、筋が通っています。 問題は、実際に測ったらどうだったか、です。
2024年、公的機関がまとめた評価
2024年に、イタリア国立衛生研究所の国立血液センターが、顔の若返りに対するPRPの系統的レビューを、さらにまとめた研究(アンブレラレビュー)を発表しました。
血液製剤を所管する公的機関による評価であり、機器や製剤を売る立場にないという点で、重みのある文献です。
中身は、次のとおりでした。
- 2015〜2023年に発表された13件の系統的レビューを対象
- そこに含まれていたのは、重複を除くと28件の一次研究
- そのうち18件が、対照群を置いていない研究だった
- 13件の系統的レビューのうち、顔の若返りについてメタ解析を行っていたのは1件だけ
- その1件では、PRPを併用した患者の満足度が対照より高かった(平均差 0.63、95%信頼区間 0.25–1、p=0.001)
- ただしエビデンスの確実性は「低い」(バイアスリスクと不一致のため)
- 4件のレビューが記述的に、PRPとレーザーの併用で満足度・弾力の向上と紅斑指数の低下を報告
- 確実性は「非常に低い」(不精確さ、系統的でない臨床観察、バイアスリスクのため)
- 有害事象を事前に評価項目として定めていたのは、13件中2件(15%)だけ
- 13件中12件のレビューが、方法論の質の評価(AMSTAR-2)で「低い」または「きわめて低い」信頼度
そして結論が、こう書かれています。
「利用可能なエビデンスは、単独であれ併用であれ、顔の若返りを促進するPRPの使用について確固たる結論を示すには不十分である」
(PMID: 38557322)
個別の領域では、どうか
目のまわりに絞った系統的レビュー・メタ解析もあります。19件の研究・455名(95%が女性、28〜60歳)を集めたものです。
3件のランダム化比較試験を統合した結果、PRP群は対照(生理食塩水、乏血小板血漿、メソセラピー、レーザー単独)よりも満足度が高いという結果でした(全体効果 p=0.001)。ただし異質性が大きく(I²=64%)、追跡期間は平均3ヶ月(1〜6ヶ月)にとどまります。
そして著者らが、今後の研究に求めた条件が示唆的です。長期の追跡、治療対象の病態の明確化、バイアスリスクの低いランダム化比較試験、そして——利益相反や企業スポンサーのないこと(PMID: 33433716)。
研究者自身が、この領域の利益相反を懸念しているということです。
この結果を、どう受け取るか
「効かない」と結論されたわけではありません。 そこは正確に受け取ってください。
言われているのは、「結論を出せるだけの質と量の研究が、まだ揃っていない」ということです。28の一次研究のうち18が対照群を置いていない——つまり、治療を受けた人が良くなったかどうかは見ているけれど、受けなかった人と比べていない。これでは、時間経過や期待による変化と区別がつきません。
そして、満足度についてメタ解析が示した差も、確実性は「低い」と評価されています。
期待の置きどころとしては、こうなります。- 「効くと確かめられた治療」ではありません
- 「有害という証拠がある治療」でもありません
- 「良さそうという報告はあるが、それを支える研究の質が低い治療」です
検討される方へ
- 単独ですか、何かと併用しますか — 記述的な報告があるのは、主にレーザーとの併用のほうです
- どのくらいの期間、効果が続きますか — 上の試験の追跡は平均3ヶ月です。それより長い話をされたら、根拠を尋ねてください
- 何回で、いくらかかりますか — 1回で終わる治療ではありません
- 効かなかった場合の次の選択肢は何ですか — 先に聞いておくと、判断が楽になります
- 根拠のはっきりした選択肢を、先に試しましたか — 日焼け止め、レチノイド、必要ならレーザー。順番として、そちらが先です
まとめ
- 自分の血液を使うので安全性は高い——これは筋が通っています。ただし安全と有効は別の問いです
- 2024年、公的機関(イタリア国立衛生研究所)が13件の系統的レビューをまとめ、「確固たる結論を示すには不十分」と結論しました
- 28の一次研究のうち18が、対照群を置いていない研究でした
- メタ解析があったのは13件中1件だけ。満足度の差は出たものの、エビデンスの確実性は「低い」
- 13件中12件のレビューが、方法論の質で「低い」または「きわめて低い」評価
- 目のまわりのメタ解析でも、追跡は平均3ヶ月、異質性は大きい
再生医療という言葉には、強い期待が乗ります。その期待と、いま手元にある根拠の量は、まだ釣り合っていません。
受けてはいけない、という話ではありません。「まだよく分かっていない治療を、分かったうえで選ぶ」のと、「効くと信じて選ぶ」のは違う、というだけの話です。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。実際の判断は、診察を受ける医師にご相談ください。
参考文献- Platelet rich plasma for facial rejuvenation: an overview of systematic reviews. Blood Transfus. 2024. PMID: 38557322
- Rejuvenating the periorbital area using platelet-rich plasma: a systematic review and meta-analysis. Arch Dermatol Res. 2021. PMID: 33433716
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の治療をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。現時点で当院はこの治療を行っておりません。 実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

