「ハイフを受けたのに、思ったほど変わりませんでした」 「効果があったという人と、なかったという人がいて、どちらを信じればいいのか分かりません」
このばらつきには、データの上で説明のつく理由があります。
先に、いちばん大事な数字をお見せします。ハイフ(マイクロフォーカス超音波)の効果を調べた16件の研究をまとめた系統的レビューで、施術から90日後の評価がこう分かれました。
| 誰が評価したか | 結果 | |---|---| | 医師(n=337) | 92% に引き締まり・シワの改善が見られた | | 患者さん本人(n=81) | 改善は「軽度」。90日で42%、360日で53% |
(PMID: 36674277)
同じ治療です。 見ている人が違うだけで、これだけ景色が変わります。
「効いた/効かなかった」という話が食い違うのは、多くの場合どちらかが嘘をついているからではありません。この治療は、そういう幅の中にある——そこから始めたいと思います。
そもそも何をしているのか
ハイフは、超音波を一点に集める装置です。
虫めがねで日光を集めると、その一点だけが焦げますね。あれと同じことを、超音波でやっています。皮膚の表面は素通りして、狙った深さだけに熱の点を作る。 表面を傷つけずに、深いところにだけ熱を届けられるのが、この方法の特徴です。
熱が加わった場所では組織がわずかに収縮し、その後の治癒の過程でコラーゲンが作り直されます。だから効果は施術直後ではなく、数ヶ月かけて出てきます。
「切らないリフトアップ」と呼ばれるのは、この仕組みからです。
どのくらい効くのか ——「中等度」という言葉の意味
2020年に報告された系統的レビュー・メタ解析は、17件の研究・477名を統合しました。5点満点で評価した結果は、次のとおりです。
- 客観的な改善スコア: 2.74点(95%信頼区間 2.06–3.43)
- 主観的な満足度スコア: 2.68点(95%信頼区間 1.92–3.45)
- 痛みのスコア: 10点満点で4.2点
- 色素沈着の報告は、含まれた研究にはなし
著者らの結論は、「短期的には安全な処置であり、顔と首の若返りに中等度の効果がある」というものでした。あわせて、含まれた研究の大半で長期の追跡が報告されていないことも指摘されています(PMID: 32026164)。
5点満点で2.7点。これが、現時点でこの治療に与えられている点数です。「劇的」ではなく「中等度」。 ここを最初に握っておくと、受けたあとの落差が小さくなります。
実際にどれだけ動くのか ——ミリ単位の話
もう少し具体的な数字もあります。16件の研究をまとめた2023年の系統的レビューでは、眉の位置が0.47〜1.7mm上がったこと、あご下の面積が側面写真で26〜45mm²減ったことが報告されています(PMID: 36674277)。
ミリメートルです。
これは「効果がない」という意味ではありません。顔の印象は、ミリ単位で変わります。 けれど、鏡の前で誰の目にも分かる変化を期待していると、この数字とのあいだにずれが生じます。冒頭の「医師92%・本人は軽度」という差も、おそらくここから来ています。
医師は施術前後の写真を並べて、輪郭線の変化を見ます。ご本人は、毎日見ている自分の顔を見ます。同じ0.47mmでも、見え方が違うのは自然なことです。
なお、患者さん自身の評価は90日で42%、360日で53%へと、時間とともに上がっていました。効果は遅れて出てくる、という仕組みとも一致しています。
向かない方が、はっきりしています
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい実務的な部分です。
2023年の系統的レビューは、強いたるみのある方と、BMIが30を超える方については、相対的な禁忌としています。理由は明快で、たるみやBMIが上がるほど、良好な結果が減っていったからです(PMID: 36674277)。
つまり——たるみが強い方ほど「切らない治療で何とかしたい」と思われるのに、そういう方ほど効きにくい。 ここが、この治療のいちばん難しいところです。
「まだ軽いうちに」がこの治療の得意な領域で、「もうかなり進んでから」は不得意な領域になります。進んでいる方には、はっきりそう伝えてくれる医師のほうが信頼できます。
安全性 ——論文と、有害事象報告のあいだにある差
安全性については、少し丁寧に見る必要があります。
2024年に報告された系統的レビューは、19件の論文・506名のデータを集めました。文献上、最も多かったのは一過性のむくみ・赤み・施術後の痛みで、重大な有害事象は限定的(皮下組織の萎縮が1例)でした。
ただし、同じ研究は機器の有害事象報告データベース(MAUDE)からも106件を抽出しています。 そこで報告頻度が高かったのは、次のものでした。
- 脂肪の萎縮(lipoatrophy)
- 神経に関わる事象 — 神経損傷、局所のしびれ、知覚の異常、眼瞼下垂
- 瘢痕
将来のフェイスリフト手術に影響したという報告は1件のみで、著者らは「科学的な裏づけを欠く逸話的な報告にとどまる」としています(PMID: 39625163)。
2023年のレビューでも、その他の有害事象は稀(2%)としつつ、知覚異常、内出血、下顎の熱傷、線状の跡、接触皮膚炎が挙げられています(PMID: 36674277)。
論文に載る数字と、報告データベースに集まる数字は、性質が違います。 論文は選ばれた条件下の話で、データベースには現場で起きたことが上がってきます。どちらか一方だけを見ると、判断を誤ります。
頻度は高くありません。ただし、ゼロではありません。 そして起きたときに問題になるのは、赤みやむくみではなく、脂肪の萎縮や神経の症状のほうです。
日本の指針は、この治療をどう位置づけているか
日本にも、美容医療そのものを扱った指針があります。『美容医療診療指針(令和三年度改訂版)』です。
その CQ2-1-3「高密度焦点式超音波治療法(HIFU)による治療はシワ、タルミに有効か?」 の推奨は、こうなっています。
推奨度 2(治療を希望する患者には、行うことを弱く推奨する)
効果は外科手術や注入剤を用いた治療に及ばないが、瘢痕形成は稀で、体内に異物を残さないため、合併症の危険性が低く、タルミ治療の選択肢の1つとして行うことを弱く推奨できる。
(日本美容外科学会 美容医療診療指針 令和三年度改訂版)
「効果は外科手術や注入剤を用いた治療に及ばない」——日本の指針が、はっきりそう書いています。
これは、この記事でここまで見てきた海外のデータ(5点満点で2.7点=中等度、ミリ単位の変化)と、まったく同じ方向を向いています。
そして推奨されている理由も明快です。効果が高いからではなく、「瘢痕が残りにくく、体内に異物を残さない」から。 つまり——
切らずに済むこと、後戻りできること。それがこの治療の価値です。
引き上げる力の強さで選ぶ治療ではない、ということが、ここからも読み取れます。
受ける前に、確認しておくとよいこと
- 私のたるみの程度で、この治療は向いていますか — 強いたるみは相対的禁忌とされています
- どの深さに、何ショット当てますか — 深さと出力の設定が結果と安全性を分けます
- 頬がこけて見えるようになる可能性はありますか — 脂肪萎縮の報告があります
- 効果はいつ、どのくらい見えますか — 数ヶ月かけて、ミリ単位で出てきます
- 次はいつ受けるべきですか — 回数を重ねるほど良い、というものではありません
まとめ
- ハイフの効果は、17件の研究・477名の統合解析で5点満点中2.7点=「中等度」。長期の追跡データは、大半の研究で報告されていません
- 医師の評価では92%が改善、ご本人の評価では「軽度」。この差は、実際に動く量がミリ単位であることから来ています
- 眉の挙上0.47〜1.7mm、あご下の面積26〜45mm²減。顔の印象は変わりますが、劇的ではありません
- 強いたるみとBMI30超は、相対的禁忌とされています。たるみが強い方ほど効きにくい治療です
- 安全性は短期的には良好。ただし有害事象報告データベースでは、脂肪萎縮・神経の症状・瘢痕が上位に来ます
- 日本の『美容医療診療指針(令和三年度改訂版)』は推奨度2(弱く推奨)とし、推奨文に「効果は外科手術や注入剤を用いた治療に及ばない」と明記しています。推奨の理由は効果の高さではなく、瘢痕が残りにくく体内に異物を残さないことです
期待値を正しい位置に置ければ、この治療は納得のいく選択肢になります。「劇的に変わる」ではなく「中等度に、ゆっくり、ミリ単位で」。 そう聞いたうえで受けるかどうかを決められることが、この治療といちばん良い付き合い方だと考えています。
そして——あなたのたるみには向きません、と言ってくれる医師を信じてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。適応の有無は、たるみの程度・体格・皮膚の状態によって変わります。実際の判断は、診察を受ける医師にご相談ください。
参考文献- Systematic review and meta-analysis of safety and efficacy of high-intensity focused ultrasound (HIFU) for face and neck rejuvenation. Lasers Med Sci. 2020. PMID: 32026164
- A Systematic Review of the Efficacy of Microfocused Ultrasound for Facial Skin Tightening. Int J Environ Res Public Health. 2023. PMID: 36674277
- Microfocused Ultrasound With Visualization: A Systematic Review of Adverse Events and Risk of Subsequent Facelift Compromise. Dermatol Surg. 2024. PMID: 39625163
- 日本美容外科学会 美容医療診療指針(令和三年度改訂版)CQ2-1-3
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の治療をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。現時点で当院はこの治療を行っておりません。 実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

