「食べ物で、肌って変わりますか」
変わると感じている方は、たくさんいらっしゃいます。そして、その実感は大切にしていただきたいと思っています。
今日はまず、私自身が気をつけている3つをお話しします。そのうえで——日本のガイドラインが「特定の食べ物を一律に制限することは推奨しない」としていることにも触れます。
この2つは、矛盾しません。 なぜ矛盾しないのかが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
酸化した油
時間の経った揚げ物、繰り返し使われた油、開封してから長く置いた油。
油は、空気・光・熱で酸化します。酸化した脂質は、体の中で炎症に関わる方向に働くと考えられています。そして、ニキビも赤みも、根っこにあるのは炎症です。
私が実際にしているのは、こういうことです。
- 揚げ物は、揚げたてなら気にしない。 時間が経ったものは選ばない
- 油は小さいボトルで買って、早く使い切る
- 開封した油を、コンロの脇に置きっぱなしにしない(熱と光が当たります)
「揚げ物は絶対にだめ」ではありません。 状態の問題です。
血糖値が急に上がる食べ方
甘い飲み物、菓子パン、空腹で麺類だけ——血糖値が急に上がる食べ方です。
血糖が急に上がるとインスリンが多く出て、皮脂の分泌やアンドロゲンの働きに関わる経路が動くと考えられています。
私が気をつけているのは、食べ物そのものより「食べ方」です。
- 単品で済ませない。 タンパク質と野菜を先に
- 甘い飲み物を、日常の水分にしない
- 空腹の時間を長くしすぎない(そのあと一気に上がります)
高温調理で増えるAGEs
同じ食材でも、焼く・揚げるといった高温の乾いた調理では、終末糖化産物(AGEs)が増えます。煮る・蒸す・茹でるでは、比較的増えません。
AGEsはコラーゲンに結合して、弾力を落とす方向に働くと考えられています。
- 同じ肉なら、こんがり焼くより、蒸す・茹でる日を混ぜる
- 焦げた部分を、あえて残さない
- レモンや酢を使う(下ごしらえで生成が抑えられるとされます)
毎食こうする必要はありません。 「今週は焼き物が続いたな」と思ったら、次は煮物にする——その程度で十分だと思っています。
では、ガイドラインは何と言っているのか
ここからが本題です。
日本皮膚科学会『尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023』には、食事に関するCQが2つあります。そして——どちらも「一律に」を否定しています。
CQ46「痤瘡患者に特定の食べ物を一律に制限することは有効か?」(推奨度C2)
痤瘡患者に、特定の食べ物を一律に制限することは推奨しない。 個々の患者の食事指導においては、特定の食物摂取と痤瘡の経過との関連性を十分に検討して対応することが望まれる。
CQ47「痤瘡患者に食事指導は有効か?」(推奨度C2)
現時点では特定の食事指導を一律に行うことは推奨しない。 なお、個々の患者の食事指導においては、食生活と痤瘡の経過との関連性を十分に検討して対応することが望まれる。
よく読むと、後半で「個々に検討することが望まれる」と書かれています。
つまりガイドラインが否定しているのは、「全員にこれを禁止する」という運用であって、「その人にとって関係がある食べ物を一緒に探すこと」ではありません。
ガイドラインは「平均」の話です
ここを、はっきり書いておきたいと思います。
ガイドラインもRCTも、集団を平均して比べたものです。
- 100人に低GI食をしてもらい、100人に普通の食事をしてもらって、平均に差が出るかを見る
- 差が出なければ「有効性は示されなかった」となる
けれど、その100人の中に「その人だけは、はっきり関係があった」という方がいても、平均の中に埋もれます。
たとえば、ガイドラインの解説にはこう書かれています。
数少ないRCTでは、チョコレートが痤瘡の悪化因子になることは否定されている。 一方で、小規模ではあるが、100%カカオパウダー負荷による二重盲検試験で痤瘡を誘発したとする報告もあり、さらなる検討が待たれる。
同じチョコレートで、結果が分かれています。 量が違えば、条件が違えば、そして人が違えば、結果は変わります。
砂糖については「痤瘡患者で摂取量が特に多いということはなく、関係しないことが示されている」、牛乳については「コホート研究はあるが反論が多く、追試が必要」——いずれも「集団として見たとき」の話です。
「あなたの肌」は、平均ではありません
私が診察でいちばん大切にしているのは、ご本人の実感です。
「これを食べた翌日に出る」という感覚をお持ちの方に、「ガイドラインに書いていないので気のせいです」とは申し上げません。むしろ、ガイドライン自身が「個々に検討することが望まれる」と書いています。
エビデンスは、「一般論として、みんなに勧めてよいか」を教えてくれます。 それは、「あなたにとって関係があるか」とは、別の問いです。
どちらか一方だけでは、診療になりません。そのうえで、大切にしていただきたいこと
「食べてはいけないもの」を増やしすぎないでください。
制限が増えると、続きにくく、栄養も偏り、そして食べることが楽しくなくなります。 それは、肌にとっても良いことではないと思っています。
私がおすすめしているのは、こういう向き合い方です。
- 気になる食べ物があるなら、記録してみる。 食べた日と、出た日を並べる。思い込みと一致しないこともありますし、はっきり一致することもあります
- 一致したなら、それはあなたにとっての事実です。 一般論より、そちらを優先してください
- 一致しなかったなら、我慢しなくていい——これも、大きな収穫です
- 野菜を増やす方向は、比較的支持があります(地中海食のメタ解析で、野菜の摂取はニキビ発症のオッズ低下と有意に関連。ただしエビデンスの質は「低い」と評価されています)
もうひとつ、同じくらい大切なこと
食べ方を整えることは、肌にとって意味のあることだと思っています。
そのうえで、もうひとつ。ガイドラインがいちばん強く勧めているのは、炎症が治まったあとも外用薬を続けること(CQ27〜29・推奨度A)です。ニキビが落ち着くと、つい止めてしまいがちなところでもあります。
食事と並べて、こちらも同じ棚に置いていただけたらと思います。
まとめ
- 私が気をつけているのは①酸化した油 ②血糖値が急に上がる食べ方 ③高温調理で増えるAGEsの3つです
- どれも「絶対に食べない」ではなく、状態と食べ方と頻度の話です
- ガイドラインは「特定の食べ物を一律に制限すること」を推奨していません(CQ46・C2)
- ただし同じ推奨文が「個々の患者において、関連性を十分に検討して対応することが望まれる」とも書いています
- ガイドラインとRCTは「平均の比較」です。 その中に「その人にははっきり関係があった」という方がいても、平均に埋もれます
- ご自身の実感は、大切にしてください。 記録して一致したなら、それはあなたにとっての事実です
- 一致しなかったなら、我慢しなくていい——これも収穫です
- 食事と並べて、寛解維持の外用薬(推奨度A)も同じ棚に置いていただけたらと思います
エビデンスは、みんなに勧めてよいかを教えてくれます。 あなたの実感は、あなたに何が起きているかを教えてくれます。
どちらも要ります。 そのうえで、無理のないところを選んでいけたら、といつも思っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。食物アレルギーがある方、持病により食事制限を受けている方は、必ず主治医の指示に従ってください。
参考文献- 日本皮膚科学会 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023(CQ46・CQ47・CQ27〜29)
- A low-glycemic-load diet improves symptoms in acne vulgaris patients: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2007. PMID: 17616769
- The mediterranean diet and acne vulgaris: a systematic review and meta-analysis. Nutr Metab (Lond). 2025. PMID: 41194132
- Adult female acne: Clinical and therapeutic particularities (Review). Exp Ther Med. 2022. PMID: 35069832
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の食事法をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

