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Skincare2026-04-04

エルゴチオネインは、いまどこにいるのか|「長寿ビタミンの候補」と書かれた段階です

Dr. みやか

Dr. みやか

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「エルゴチオネイン、グルタチオンより強いんですよね」

この成分については、基礎研究の側で、実際に興味深いことが起きています。そして、人の肌については、まだ何も確かめられていません。

その両方を、そのまま書きます。

この記事の以前の版は、タイトルに「グルタチオンを超える」「驚くべき細胞保護効果」と書いていました。根拠を確かめられなかったので、取り下げます。


2018年 — 「長寿ビタミンの候補」として提案されました

2018年に『PNAS』に載った論文があります(PMID: 30322941)。

著者は、タンパク質を「生存タンパク質」と「長寿タンパク質」に分けるという仮説を提唱しています。栄養素がわずかに不足すると、体は目先の生存に必要なほうを優先し、将来の損傷を防ぐほうを犠牲にする——という考え方です。

そのうえで、「長寿ビタミン」という新しい分類を提案しました。

タウリンを条件付きビタミンとする根拠と、以下の10の化合物を推定上の(putative)長寿ビタミンとする根拠が、本稿でレビューされる: 真菌由来の抗酸化物質エルゴチオネイン⁠、細菌代謝物のPQQとキューイン、植物由来のカロテノイド(ルテイン、ゼアキサンチン、リコピン、α・β-カロテン、β-クリプトキサンチン)、海洋由来のアスタキサンチン。

ここは、正確に読む必要があります。
  • 「推定上の(putative)」と書かれています。確定した分類ではなく、著者が提案している仮説です
  • 単著の総説です
  • 「長寿ビタミン」という概念そのものが、この論文で提案されたものです

「注目されている」は本当です。「確立している」ではありません。

2025年 — マウスで、作用点が特定されました

2025年に『Cell Metabolism』に報告された研究です(PMID: 39965563)。

エルゴチオネインは食事由来の非典型的なアミノ酸で、ヒトの組織に高濃度で蓄積する。 エルゴチオネインの低下は、神経変性疾患や心血管疾患を含む加齢関連の疾患と関連づけられてきた。 しかし、生理学的に意味のある直接の分子標的は、明らかでないままだった。

運動トレーニングによって、エルゴチオネインが筋肉のミトコンドリアに蓄積することを見出した。 3-メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素(MPST)が、エルゴチオネインの直接の分子標的として同定された。 エルゴチオネインはMPSTに結合して活性化し、マウスにおいてミトコンドリアの呼吸と運動能を高めた。

これは、質の高い基礎研究です。「何に効くのか分からない成分」から、「何に結合するか分かった成分」に進んだ、ということです。

ただし——マウスの実験です。そして、扱っているのは運動能とミトコンドリアであって、肌ではありません。

人の肌については、見つけられませんでした

エルゴチオネインについて、人の肌での美容目的の効果を確かめた臨床試験を探しました。

見つけられませんでした。

「効かない」ではありません。「確かめた報告に行き当たらなかった」という意味です。

そして——②のように基礎研究が進んでいる成分でも、人の肌で確かめる段階は、それとは別に必要です。

機序が分かることと、人で効くことが確かめられることは、別です。この話はPDRNの記事にも書きました。

「グルタチオンを超える」について

細胞内での安定性や滞留の長さといった性質が、試験管の中で比較されることはあります。

けれど「グルタチオンより効く」と言うためには、人で両者を比べた試験が要ります。

グルタチオンのほうには、系統的レビューがあります。外用0.5%と内服250〜500mgには、プラセボと比べた有意な結果があり、静脈内投与は「有効性の欠如と副作用のため禁忌」とされています。 白玉点滴の記事に書きました。

エルゴチオネインには、その段階の研究がありません。

比べる土俵が、まだ揃っていません。

では、どうするか

害の報告があるわけではありません。きのこ類(しいたけなど)に多く含まれる、食品由来の成分です。

  • 食事から摂る分には、心配の要る話ではありません
  • サプリメントで補う場合、「肌が変わる」という根拠は、いまのところありません
  • 基礎研究は動いています。数年後には、違うことが書けるかもしれません
  • 値段が上がる分の根拠は、③のとおり、まだありません

飲むものの読み方は、飲む美容成分の記事と飲む保湿の記事に整理しました。

まとめ

  • 2018年に「推定上の(putative)長寿ビタミン」の候補として提案されました(PMID: 30322941)。確定した分類ではなく、単著の総説による仮説です
  • 2025年、MPSTという直接の分子標的が同定されました(PMID: 39965563)
  • ただしマウスの実験で、対象は運動能とミトコンドリアです
  • 人の肌での美容目的の臨床試験は、見つけられませんでした
  • 「グルタチオンを超える」と言うには、人で両者を比べた試験が要ります。その段階にありません
  • きのこ類に含まれる食品由来の成分で、害の報告があるわけではありません
  • 基礎研究は動いています。 数年後には、書けることが変わるかもしれません

「これから面白くなるかもしれない成分」と、「いま買う理由のある成分」は、別です。いまは、前者だと思っています。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。サプリメントの摂取は、持病のある方、妊娠中・授乳中の方、服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。

参考文献
  • Prolonging healthy aging: Longevity vitamins and proteins. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018. PMID: 30322941(「推定上の長寿ビタミン」の候補としての提案)
  • Ergothioneine controls mitochondrial function and exercise performance via direct activation of MPST. Cell Metab. 2025. PMID: 39965563(マウスでの実験)
  • Glutathione as a skin-lightening agent and in melasma: a systematic review. Int J Dermatol. 2024. PMID: 39444151

※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の製品をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。実際の判断は主治医とご相談ください。

Dr. Miyaka Signature

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

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