「2時間ごとに塗り直してください」
日焼け止めの説明で、いちばんよく言われることです。そして——いちばん守られていないことでもあります。
今日は、この指示を実際のデータで検証します。結論を先に書きます。
塗り直しの頻度より、最初に塗る量のほうが、はるかに効いていました。
まず、SPFとPAが何を意味するか
SPFは、UVB(主に日焼けで赤くなる波長)に対する指標です。「何も塗らないときと比べて、赤くなり始めるまでの時間が何倍になるか」を表します。
ここから、遮る割合は計算で出せます。
| SPF | 通り抜ける割合 | 遮る割合 | |---|---|---| | SPF15 | 1/15 | 約93% | | SPF30 | 1/30 | 約97% | | SPF50 | 1/50 | 約98% |
SPF30とSPF50の差は、遮る割合でいえば1ポイント程度です。 数字は1.7倍ですが、遮蔽率の差はごくわずか。「50じゃないと意味がない」ということはありません。
PAは、UVA(シワやたるみに関わる波長、窓ガラスも通る)に対する指標で、+の数で表されます。シワ・たるみを気にされるなら、見るべきはこちらです。
量の話 ——ここが本丸です
そして、上のSPFの数字には前提条件があります。
表示されているSPFは、1平方センチメートルあたり2mgを塗って測定した値です。これは試験の規格として決められた量で、実際に人が塗る量よりかなり多いことが知られています。
では、半分しか塗らなかったら、どうなるか。2018年に報告された二重盲検のランダム化比較試験が、まさにそれを調べています。参加者24名を2群に分け、2mg/cm²(試験規格の量)と1mg/cm²(実生活での塗布量)でSPF15とSPF70を背中に塗り、時間を追ってSPFを実測しました(PMID: 29320597)。
結果です。
試験濃度の半分を塗った群は、表示されたSPFの「約半分以下」しか得られなかった。
具体的な数字も出ています。8時間後の実測値は——
| 製品 | 2mg/cm²(規格量) | 1mg/cm²(半量) | |---|---|---| | SPF70 | 平均64超 | 26 | | SPF15 | 13 | 7 |
SPF70を半量で塗った人(26)のほうが、SPF15を規定量で塗った人(13)より守られていました。 表示だけを見ても意味がない、という話です。
「顔だけなら、指の第一関節2つぶん」という目安がよく使われます。実際に出してみると、思っているより多いはずです。それが規格の量です。
塗り直しの話 ——常識が揺れています
同じ研究が、時間経過も調べています。
参加者は、塗布後に30分の中程度の運動をし、さらに80分の水中曝露を行いました。かなり過酷な条件です。そのうえで、3.5時間後と8時間後にSPFを実測しました。
8時間後のSPFの低下は、両群とも15〜40%にとどまった。
そして著者らの結論が、こうです。
現在の日焼け止めは、大量の運動と水中曝露のあとでも、肌の上で持続しうることが示された。 塗り直しの間隔は、現在推奨されているものより長くてよい可能性がある。
(PMID: 29320597)
「2時間ごと」という指示の根拠が、揺れているということです。
ただし、限界も書いておきます。 参加者は24名、部位は背中、製品は2種類だけ。これ1本で「塗り直しは要らない」とは言えません。 顔は手で触れる回数が多く、汗も拭きます。背中とは条件が違います。
では、どうするのが合理的か
この2つを並べると、実務的な答えが出ます。
最初に、規格の量をしっかり塗る。 そのうえで、汗をかいたとき・拭いたとき・水に入ったときに足す。
「2時間ごとに薄く塗り直す」より、「最初にしっかり、必要なときに足す」ほうが理にかなっています。 塗り直しは時計で決めるものではなく、落ちた分を戻す行為だからです。
そして——塗り直せない状況で悩むより、朝の量を増やすほうが確実です。 メイクの上から塗り直せないという方は多いのですが、朝の量が足りているかどうかのほうが、影響が大きいことになります。
成分の吸収について
「日焼け止めの成分が体に入るのが心配」というご質問も、よくいただきます。
これについては、FDAが実施した試験があります。健康な24名に、4種類の市販日焼け止めを2mg/cm²、体表面積の75%に、1日4回、4日間塗布し、血中濃度を測定したものです(PMID: 31058986)。
結果として、4製品すべてで、1日目の4回塗布のあとに、FDAが定めた基準値(0.5 ng/mL)を超える血中濃度に達しました。
これは事実です。成分は吸収されます。
ただし、同じ論文の結論に、こう書かれています。これらの結果は、個人が日焼け止めの使用を控えるべきであることを示すものではない。
FDA自身の言葉です。「吸収される」ことと「害がある」ことは、別々に確かめる必要があります。血中に検出されたことは、さらなる研究の必要性を示すものであって、使用をやめる根拠ではありません。
なお、この試験は体表面積の75%に1日4回、4日間という、日常とはかけ離れた条件(最大使用条件)で行われています。気になる方は、紫外線散乱剤(酸化亜鉛・酸化チタン)を主体にした製品を選ぶという選択肢もあります。
そもそも、なぜ塗るのか
ここまで塗り方の話をしてきましたが、なぜ塗るのかの根拠も確認しておきます。
903名を4年半追いかけた無作為化試験で、毎日塗った群では皮膚老化の増加が検出されず、時々塗る群より24%少なかったという結果が出ています(PMID: 23732711)。比較の相手は「塗らない人」ではなく「時々塗る人」でした。詳しくはこちらの記事へ。
差を作るのは、強度ではなく日数です。まとめ
- SPF50とSPF30の遮る割合の差は、1ポイント程度。「50じゃないと意味がない」ということはありません
- 表示SPFは2mg/cm²で測った値です。半量で塗ると、表示の半分以下しか得られませんでした
- SPF70を半量で塗った人より、SPF15を規定量で塗った人のほうが低い保護でした。表示の数字だけでは、実際に守られている強さは分かりません
- 8時間後のSPF低下は15〜40%にとどまりました——30分の運動と80分の水中曝露のあとで
- 著者らは「塗り直しの間隔は推奨されているより長くてよい可能性がある」と結論しています。ただし24名・背中・2製品の試験です
- 時計で塗り直すより、最初にしっかり塗る。そして落ちたら足す
- 成分は吸収されます(FDAの試験)。ただしFDA自身が「使用を控えるべきという意味ではない」と書いています
- シワ・たるみを気にするなら、見るべきはPA(UVA)のほうです
データが示していたのは、塗り直しの回数よりも、朝の一度をしっかり塗ることのほうが大きく効いている、ということでした。
時計を見るより、朝、いつもより少しだけ多めに。 今日からできるのは、それだけです。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。肌に合わない場合は使用を中止し、症状が続く場合は皮膚科にご相談ください。
参考文献- Realistic Sunscreen Durability: A Randomized, Double-blinded, Controlled Clinical Study. J Drugs Dermatol. 2018. PMID: 29320597
- Effect of Sunscreen Application Under Maximal Use Conditions on Plasma Concentration of Sunscreen Active Ingredients: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019. PMID: 31058986
- Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013. PMID: 23732711
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

