「髪にも日焼け止めをしたほうがいいですか」
紫外線が髪を傷めること自体は、整理されています。問題は、その次でした。
髪の光防御について書かれた総説を読むと、こう書かれています(PMID: 26454659)。
皮膚の光防御とは異なり、ヘアケア製品の有効性を評価するための規制されたパラメータが存在しない。そのため、文献に発表された結果どうしを比較することが不可能である。
つまり——「この製品のほうが守れる」を、比べる物差しがありません。
何が起きるかは、書かれています
同じ総説が、太陽光(紫外線・可視光・赤外線)が髪に与える影響として挙げているものです。
色 力学的な性質(強度・しなやかさ) つや タンパク質の含有量 表面の粗さ
髪の主成分はケラチンというタンパク質で、色はメラニンによります。どちらも、光で変化します。
そして髪には、肌と違って「治る」仕組みがありません。
毛穴から出た時点で、その毛は代謝を終えています。傷んだ部分が自分で修復されることはなく、伸びて切るまで、その状態のままです。
ここが、肌との決定的な違いだと思っています。 肌のターンオーバーについては28日周期の記事に書きました。
ただし、「どの波長が何をするか」は決まっていません
同じ総説の、次の一文です。
放射線が髪を傷めることは分かっているにもかかわらず、太陽放射の各波長域が毛幹に及ぼす個別の影響については、コンセンサスがない。
「UVAが色を変え、UVBがタンパク質を壊す」といった説明を見かけることがありますが、総説の時点では、そこまで分けられていません。
そして、比べる基準がありません
冒頭に引いた一文を、もう一度置きます。
皮膚の光防御と異なり、ヘアケア製品の有効性評価には規制されたパラメータが存在せず、そのため文献に発表された結果を比較することが不可能である。
肌の日焼け止めには、SPFとPAがあります。測り方が決められていて、だから「SPF50はSPF30より強い」と言えます。
髪には、それがありません。「UVカット」と書かれたヘアミストが2本あったとして、どちらがどれだけ守るのかを比べる方法が、公的にはない、ということです。
総説の著者らは、最後にこう求めています。研究者は、線量・照射強度・時間・温度・相対湿度といった、実際の日光曝露に近い実験条件を適用する努力をすべきである。
裏を返せば、現状の研究は条件がばらばらだ、ということです。
製品は、主に「染めた髪」に向けられています
もうひとつ、実用的な記述があります。
ヘアの光防御製品は、主に染毛された髪、特に赤褐色系の色素や、グレーの色調を対象としている。 通常、シリコーン、抗酸化剤、負に帯電した毛髪表面により親和性が高く、より高い有効性を示す第四級アンモニウム型の紫外線吸収剤に基づいている。
開発の主な目的は、「髪を守ること」より「色を保つこと」に置かれてきた——そう読めます。
染めている方にとっては、意味のある製品だということでもあります。
では、どうするか
②③から、素直に言えることだけを書きます。 物理的に遮るほうが、確実です帽子と日傘には、比べる基準の問題がありません。そして、頭皮も同時に守れます。
頭皮は、日光が最も強く当たる場所のひとつです。 頭皮のトラブルについては頭皮の記事に書きました。
「UVカット」の表示は、期待の置きどころを揃えて③のとおり、強さを比べる基準がありません。「つけないよりは」という位置づけで使うのが、実際に合っていると思います。
染めている方は、色持ちの観点で意味があります ④のとおり、そこが主な開発目的です。 傷んだ部分は、戻りません①のとおりです。だから、髪については「守る」より「切る」ほうが、確実に見た目を変えます。
顔の日焼け止めのほうは、根拠がはっきりしています903人を4年半追跡した無作為化試験で、毎日の使用が皮膚老化を有意に抑えています(日焼け止めの記事・PMID: 23732711)。塗り方については塗り方の記事へ。
まとめ
- 太陽光は、髪の色・強度・つや・タンパク質量・表面の粗さを変えます(PMID: 26454659)
- 髪には、傷んだところが自分で治る仕組みがありません
- どの波長が何をするかについては、コンセンサスがありません
- ヘアケア製品の紫外線防御には、SPFやPAにあたる規制された評価基準が存在しません
- そのため、論文どうしの結果を比較することが不可能である、と著者らが書いています
- 製品は主に「染めた髪の色を保つこと」を対象に開発されてきました
- 帽子と日傘には、比べる基準の問題がありません。 頭皮も同時に守れます
- 顔の日焼け止めのほうは、903人・4年半の無作為化試験で確かめられています
「髪にもUVケアを」は、間違ってはいません。ただ、「どれくらい守れるか」を答えられる仕組みが、まだないだけです。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。急激な脱毛、頭皮の発疹や痛みを伴う場合は、皮膚科を受診してください。
参考文献- Effects of solar radiation on hair and photoprotection. J Photochem Photobiol B. 2015. PMID: 26454659(評価基準が存在せず比較不可能、と明記)
- A Review: Hair Health, Concerns of Shampoo Ingredients and Scalp Nourishing Treatments. Curr Pharm Biotechnol. 2015. PMID: 26278532
- Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Ann Intern Med. 2013. PMID: 23732711
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の製品をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

