「寒くなると、急に乾きます」
これは、実際に測られています。そして、測ってみると、思っていたより具体的なことが分かっていました。
とくに——ニキビのある方では、冬の差がもっと開きます。 そこまでお話しします。
1年間、毎月測った研究があります
思春期の男子を対象に、1年間・毎月、顔の皮膚を測り続けた研究です(PMID: 26091385)。ニキビのある7人と、ない10人を比べています。
皮脂の産生は、冬に最も低く、秋に最も高かった。 肌の水分量は、夏と秋のほうが冬より高かった(いずれもp ≦ 0.016)。 経表皮水分蒸散量(TEWL=バリアからの水分の逃げやすさ)は、ニキビのある群で、すべての季節を通じて高かった(p = 0.001)。
「冬は脂質の産生が低く、バリア機能が落ちる」——研究者は、この季節性をはっきり書いています。
ただし、17人の研究です。規模としては、とても小さいものです。
140人でも、同じ方向でした
もう少し大きい研究もあります(PMID: 34599628)。140人を、健康な肌と敏感肌のサブグループに分けて、冬と夏に測ったものです。
注目したいのは、後半です。4つの群すべてで、経表皮水分蒸散量(TEWL)・皮膚のpH・皮膚の血流に、冬と夏で有意な差が認められた。 角層の水分量については、乳酸でしみる反応が出る群でのみ、季節差が有意だった。
季節の影響の出方が、肌のタイプによって違いました。著者らは「季節の変化に合わせて、敏感肌のサブグループごとに異なる対応をとることを強く勧める」と結論しています。
「冬はみんな乾く」ではなく、「冬に何がどう変わるかが、人によって違う」ということです。
セラミドを283種類、分けて測った研究
そして、ここからが本題です(PMID: 29356138)。
質量分析という手法で、角層のセラミドを283種類にまで分けて測り、1年を通じて変化を追った研究です。
ニキビのある肌では、セラミドの量が全体に低かった。 特に CER[NH]・CER[AH]、そしてアシルセラミドの CER[EOS]・CER[EOH] の減少が目立った。 これらの差は、冬季にいっそう明確だった。 ニキビのある肌ではTEWLが高く、それは夏には部分的に回復した。
ニキビの肌は、もともとセラミドが少ない。そして冬に、その差がさらに開く。
この研究には、注意点もあります。- 著者2名が Johnson & Johnson Consumer Inc. の所属です
- 対象は思春期の男子が中心の、小規模な研究です
それでも、283種類に分けて1年追った研究は多くありません。方向としては、①②とも一致しています。
ここから言えること
「乾燥」と「ニキビ」は、別々の悩みとして扱われがちです。
けれど、③のデータは、その2つが同じ場所でつながっていることを示しています。
ニキビがあるから乾くのか、乾いているからニキビが出やすいのか——この研究は、どちらが先かまでは答えていません。
答えているのは、「同時に起きている」ということと、「冬に差が開く」ということです。
だとすると、実際の手当てとして意味があるのは、こうなります。
- 冬にニキビの治療が急にしみるようになったら、それは「薬が合わなくなった」ではなく「バリアが薄くなった」可能性があります
- 外用薬を止める前に、保湿の側を厚くするほうが、順番として先です
- 「ニキビだから保湿しない」は、③のデータとは逆向きです
自己判断で外用薬を中止せず、しみることを主治医にお伝えください。多くの場合、量や頻度の調整で続けられます。
では、何を塗るか
ここは、正直に線を引いておきます。①②③は「季節で肌がどう変わるか」を測った研究であって、「どの保湿剤が良いか」を比べた研究ではありません。
「セラミドが減っているのだから、セラミドを塗ればよい」——これは理屈としては自然ですが、この3本の研究からは出てきません。
保湿剤について確かめられている範囲は、保湿の記事に、25,827人分のデータまで含めて整理しました。「ヒト型セラミドか、擬似セラミドか」を比べた臨床試験は、そこにも見当たりませんでした。
選ぶ基準として現実的なのは、「刺激が出ないこと」と「続けられること」だと思っています。
冬に、実際にすること
①②③から素直に導けることだけを書きます。- 気温が下がる前から始める。 皮脂が最も低いのは冬です。落ちてから足すより、落ちる前に厚くしておくほうが楽です
- 洗いすぎのほうを、先に見る。 バリアが薄い時期に落としすぎると、差が開きます。洗顔の記事とすすぎの温度の記事へ
- しみる・赤くなるが出たら、量や頻度を調整する。 ②のとおり、反応の出方は人によって違います
- ニキビの外用薬は、自己判断で止めない(④のとおりです)
まとめ
- 皮脂の産生は冬に最も低く、肌の水分量も冬に低い——1年間毎月測った研究の結果です(PMID: 26091385・n=17)
- 140人でも、TEWL・pH・血流に冬夏の有意差がありました(PMID: 34599628)
- 季節の影響の出方は、肌のタイプによって違います。 著者らはタイプ別の対応を勧めています
- 283種類に分けて測ると、ニキビのある肌はセラミドが全体に低く、その差は冬にいっそう明確でした(PMID: 29356138・著者に企業所属者を含む)
- ニキビのある肌のTEWLの上昇は、夏に部分的に回復していました
- 「乾燥」と「ニキビ」は、同じ場所でつながっています
- ただし、これらは「季節で何が変わるか」の研究であって、「どの保湿剤が良いか」の研究ではありません
- 冬にしみるようになったら、外用薬を止める前に、保湿を厚くして主治医に相談してください
「寒くなると乾く」は、気のせいではなく、測られている現象でした。そして、ニキビのある方ほど、その幅が大きいようです。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。処方された外用薬を自己判断で中止しないでください。しみる・赤くなるなどの症状は、必ず主治医にお伝えください。
参考文献- Seasonal changes in epidermal ceramides are linked to impaired barrier function in acne patients. Exp Dermatol. 2018. PMID: 29356138(著者にJ&J Consumer所属者を含む)
- Evaluation of Seasonal Changes in Facial Skin With and Without Acne. J Drugs Dermatol. 2015. PMID: 26091385(n=17)
- Seasonal changes in the physiological features of healthy and sensitive skin. J Cosmet Dermatol. 2021. PMID: 34599628
※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の製品をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。実際の判断は主治医とご相談ください。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

