← Journal
Skincare2026-06-12

バクチオールの試験は15本。うち12本が非盲検・対照群なしでした|よく引かれる1本と、その周り

Dr. みやか

Dr. みやか

9 min read

「バクチオールなら、レチノールみたいに荒れないんですよね」

この評価の元になっている試験が、1本あります。そして、その周りの状況も、あわせて見ておく価値があります。


よく引かれる、44人の試験

2018年に『British Journal of Dermatology』に報告された試験です(PMID: 29947134)。

44人を対象とした、無作為化・二重盲検の12週間の試験。 バクチオール0.5%クリームを1日2回、またはレチノール0.5%クリームを1日1回。 高解像度の顔写真を0・4・8・12週で撮影し、解析。盲検化された皮膚科の専門家が、色素沈着と赤みを採点。

バクチオールとレチノールは、どちらもしわの表面積と色素沈着を有意に減少させ、両者の間に統計的な差はなかった。 レチノールの使用者のほうが、顔の皮膚の落屑とヒリつきをより多く報告した。

設計は、しっかりしています。無作為化・二重盲検で、評価者も盲検化されています。

ただし、2点だけ。
  • 44人です
  • 無治療やプラセボと比べる群がありません。「バクチオールとレチノールに差がなかった」は言えますが、「どちらも何もしないより良い」は、この試験からは出てきません

基剤(保湿剤)そのものの寄与については、レチノイドの記事に書きました。あちらでは、基剤だけの群も30〜40%改善していました。

では、その周りはどうか

2024年に、バクチオールのヒト臨床試験を集めた系統的レビューが出ています(PMID: 38564402)。

15のヒト臨床試験が解析された。 対象は、老化・ニキビ・炎症後色素沈着。

12試験は、対照群のない非盲検のオープン試験であった。 10試験は、バクチオールを含む配合療法を用いていた。 4試験は、バクチオールの用量または濃度を明記していなかった。 治療・研究デザイン・評価項目の異質性のため、メタ解析は実行不可能であった。

そして、結論です。

これらの試験は方法論的な厳密さを欠いており、報告された結果に高いバイアスのリスクをもたらす。 バクチオールを含む配合の外用剤が用いられていることが、バクチオールの有効性をレチノイドと比較することを制限している。 改善された試験デザインによる、継続的な研究が必要である。

15試験のうち、①のようにしっかりした設計のものは、ごく一部だということです。

そして——10試験が「他の成分と混ぜたもの」を試しています。それでは、良くなった分がバクチオールのおかげかどうかが分かりません。

何が言えて、何が言えないか

言えること
  • 44人・12週の二重盲検で、レチノール0.5%と比べて、しわと色素沈着の改善に差がありませんでした
  • 同じ試験で、レチノール群のほうが落屑とヒリつきを多く報告しました
  • 「刺激が少ない」という評価には、この1本の根拠があります
言えないこと
  • 「レチノールと同等の効果がある」——比較した相手はレチノール0.5%の1濃度で、試験は1本です
  • 「何もしないより良い」——無治療対照がありません
  • 「レチノイド全般の代わりになる」——トレチノインなどの医薬品と比べた試験ではありません
  • 製品ごとの比較——②のとおり、配合も濃度も揃っていません

選ぶときに

刺激で続けられなかった方には、選択肢になります

①の結果は、そこにいちばん意味があると思っています。続けられない薬は、届く総量が減ります。 この考え方は化粧品の浸透の記事に書きました。

濃度の表示を見る

②のとおり、4試験は濃度を明記していませんでした。製品側も、書いていないことがあります。①で使われたのは0.5%です。

「配合されている」だけでは、判断できません

②のとおり、10試験が配合製剤です。バクチオールが少量入っているだけの製品と、①と同じ条件の製品は、別のものです。

判断は12週で

①の評価点は12週です。 時間軸についてはターンオーバーの記事へ。

妊娠中の方へ

バクチオールは化粧品成分であり、レチノイドとは構造の異なる物質です。ただし、妊娠中の安全性を確かめた試験を、今回は見つけられませんでした。妊娠中・授乳中の使用については、主治医にご確認ください。 妊娠中の整理は妊娠中のニキビの記事へ。

まとめ

  • 44人・12週の無作為化二重盲検で、バクチオール0.5%とレチノール0.5%に、しわ・色素沈着の改善の差はありませんでした(PMID: 29947134)
  • レチノール群のほうが、落屑とヒリつきを多く報告しました
  • ただし、無治療やプラセボと比べる群がありません
  • 系統的レビューが集めた15試験のうち、12試験は非盲検で対照群なし(PMID: 38564402)
  • 10試験は配合製剤で、4試験は濃度を明記していませんでした
  • 「方法論的な厳密さを欠き、高いバイアスのリスクがある」と結論されています
  • 「刺激が少ない」には根拠があります。「レチノールと同等」は、1本・1濃度の話です
  • 濃度の表示を見てください。 ①で使われたのは0.5%です

バクチオールは、刺激で続けられなかった方にとって、意味のある選択肢だと思っています。そのうえで——根拠が1本に集中している、ということも、あわせて知っておいていただけたらと思います。


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医学的判断に代わるものではありません。化粧品の使用で刺激やかぶれが生じた場合は、使用を中止して皮膚科にご相談ください。妊娠中・授乳中の使用については、主治医にご確認ください。

参考文献
  • Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing. Br J Dermatol. 2018. PMID: 29947134(n=44・無治療対照なし)
  • Human Clinical Trials Using Topical Bakuchiol Formulations for the Treatment of Skin Disorders: A Systematic Review. J Drugs Dermatol. 2024. PMID: 38564402(15試験中12試験が非盲検・対照群なし)
  • The Use of Bakuchiol in Dermatology: A Review of In Vitro and In Vivo Evidence. J Drugs Dermatol. 2022. PMID: 35674758

※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定の製品をおすすめするものではありません。 効果には個人差があります。実際の判断は主治医とご相談ください。

Dr. Miyaka Signature

※ この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療アドバイスではありません。 効果には個人差がございます。具体的な治療については専門医にご相談ください。

Stay Connected

日々の気づきや、論文から見えてきた新しい美しさのヒントを、Instagram と 公式LINE でお届けしています。